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帝国主義論争 [政治]

若かりし頃、学生たちは議論好きだった。その一つに帝国主義論争というのがあった。日帝自立論と対米従属論の論争だ。急進的な学生の間で人気だったのは日帝自立論で、「ベトナム戦争への加担はア、まさにイ、日帝がアジア侵略をオ、」とやるのだから、日本が帝国主義国であることが全ての前提にある。

帝国主義というのは、資本主義の最高の発展段階で、独占が進み、国家と共謀した軍事的凶暴性を身につけたものだ。帝国主義国は他国を侵略し、互いに利害の対立をうみ、必ず大国間戦争になる。これが帝国主義戦争で多くの国民はそのために駆り出されて犠牲になる。

で、日本は資本主義が十分発展しているから当然帝国主義であって、ベトナム戦争は、アジア侵略の第一歩だというのだ。

しかし、日本が帝国主義ならなんでアメリカと軍事同盟なんだ?帝国主義どおしの激突が起こるはずではないのか。そもそもアメリカ帝国主義は、一旦日本を完全にその支配下においたはずだ。帝国主義は、支配する植民地を立派な資本主義国=帝国主義国に育て上げるものなのか。アメリカがベトナムを帝国主義になるまで発展援助するなら、それは侵略ではないことになる。

対米従属論を取っていたのは共産党の影響が強い「代々木系」と呼ばれていたグループと「毛沢東系」のグループなのだが、「代々木」の見解では、日本は高度に発達した資本主義国ではあるが、アメリカの半植民地であって帝国主義ではないことになっている。こちらの方は、歴史的経過には符合するが、なぜ資本主義が高度に発展しても帝国主義にならないのかという疑問がでてくる。回答としては、今に帝国主義になるが、まだなっていないと言うだけだとのことであった。では、何時なるのだという疑問がすぐに沸いてくる。

どちらも、資本主義が発達すると帝国主義になるという原理をかかえているのだが、それを捨ててしまうと、なぜアメリカがベトナムを侵略するのかという説明がなくなるから困るのだ。全共闘系は「日帝との正面衝突を回避する日和見主義」となじり、代々木は「アメリカ帝国主義を免罪する日和見主義」となじった。

今振り返ってみれば、もはや帝国主義の時代は終わったと思える。第一次世界大戦は帝国主義戦争であったが、第二次世界大戦で、イデオロギー戦争の側面が加わり、植民地の独立運動が加わった。独立運動に敗北する大国も出てきて、凶暴な軍事力を備えた高度に発達した資本主義としてはアメリカだけが勝ち残った。もはや帝国主義戦争が起こる下地がなくなった。事実、この60年の間、大国間の大戦争は起こっていない。

アメリカはその後も帝国主義的な振る舞いを続けてはいるが、世界を完全に支配しているわけではない。軍事力による支配ができない時代に突入したのだ。戦争はもはや経済的に成り立たなくなったと言ったほうが良い。武器が高度に成り、値段が高騰したし、兵士の労働コストも高くなった。昔のように戦争で国が富むということはありえなくなったのだ。その意味で帝国主義は死滅した。

現在ある戦争は、役立たずの軍事力を維持するためのアリバイとして軍需産業が画策した小競り合いにすぎない。小さな戦争「テロとの戦い」を繰り返して軍事産業の利益を確保しようとしているだけだ。アメリカですでに斜陽になりつつある軍事産業に遅れて乗り出した日本が、猿真似をしていれば、経済はますます落ち込んでいくだろう。



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