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原発にだまされた日本 [原発]

福島の原発事故で多くの人が原発に騙されたと思っている。確かに原発は危ないという話は聞いた。しかし、一方で電力会社も政府も安全だと何度も繰り返して広報してきた。あれだけ大きな会社の偉い人たちが言っているのだからまんざら嘘でもあるまいと多くの人が信じた。勿論、危険はゼロではないだろうが、相応の技術的な対応も進んでいるし、電力は必要だから、多少の放射能漏れの事故はあってもたいしたことにはならないだろう。そんな風に思っていて、ここまで大きな被害になるとは夢にも思わなかった。

ある程度の「識者」もやはり騙されていた。チェルノブイリで事故があったときに、盛んに黒鉛炉と軽水炉は根本的に異なり、いかにうまく制御棒が挿入されるかを説明した。あたかも制御棒の操作だけが重大な問題であるかのような説明に技術的な知識のある人も惑わされたのだ。たしかに緊急時に間違いなく制御棒は挿入された。しかし問題はその後の崩壊熱だった。多くの「識者」が、制御棒の操作だけが安全の全てであるかのように誘導されてしまったのである。

原子炉の危険を煽り立てたセンセーショナルな著作で知られる広瀬隆氏にしても盛んに恐ろしさを強調はしたもののその中身で印象に残ったのは、チェルノブイリ型の悪口とあとは微量な放射能漏れの話だった。100万kWの発熱がある原子炉の熱源はウランの分裂とその生成物の崩壊によっている。ウランの分裂が止まっても生成物の崩壊が続くことは考えてみれば当たり前で、それがたとえ0.1%にまで落ちても、100万Wなのだから膨大な発熱だ。多くの批判的な科学者も目がこれに向かなかったのは重大なミスだろう。

しかし、中にはわかっていた人もいた。共産党の衆議院議員吉井英勝氏は、京大の原子力工学出身でさすが専門家だ。2006年3月1日の予算委員会で津波により冷却不能になる危険を指摘している。吉井氏も発電機の損傷ではなく引き潮で取水が出来なくなることを想定しているから完全に今回の事態の予告というわけではないが、バックアップ電源系統が使えなくなるとか、水素爆発、炉心溶融まで指摘しているからかなり近い予想だ。

どうするつもりだと追求されて、答弁に立った二階経済産業相は「今後、経済産業省を挙げて真剣に取り組んでまいりますことを、ここでお約束申し上げておきたいと思います」と逃げた。その後、事故に至るまで政府が何もしなかったのは明白だ。口先だけで約束したのにすぎない。共産党がまた文句をつけてきたという程度にしか対応していない。

多くの識者や国民もこの吉井質問を真剣に受け止めて、こんないい加減な答弁はけしからんと怒りもしなかったし、国会討論が評価されて共産党の票が増えたわけでもない。結局、日本全体が大会社の偉い人達の言葉に騙されて安閑と日を過ごしたことになる。少なくとも災害に関しての警告は真面目に受け止める姿勢を持たねばならない。日本人全体への教訓である。


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