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イレッサ裁判(4) ---イレッサは効く薬なのか [イレッサ]

治験に基づく薬剤の承認で、日本の体制は悪名高い。免疫力を高めてガンを克服する薬として承認されたビシバニールやクレスチンは1000億円以上を売り上げたあとで、効能が無いことが明らかになった。抗がん剤の承認基準というのはそれくらいいい加減なものなのだ。

こういったものに比べればイレッサはまだましで、副作用死も現在はかなり少なくなっているし、「正しい使い方」をすればそれなりに有用な薬品であるというのが一般認識になっていることも事実だ。しかし、裁判で争われているのは、多くの副作用死を生み出した発売時点での事だ。その効用はどのようなものだったのか?

発売前から、分子標的薬として期待され、「副作用のない夢の新薬」としてもてはやされた。ところが、治験で得られた奏効率は国内で17%国外では9%でしかなかった。延命にはほとんど役立たない。分子標的薬の白血病抗癌剤として先行したイマチニブの場合、奏効率で言えば85%であり75%が寛解するという「夢の新薬」にふさわしい治験結果が得られていたことに比べてあまりにも見劣りが大きい。こんなもので認可していいのかと言う疑問は審査委員の中からも出たことが議事録からわかる。分子標的薬の作用機序から考えればこんなにも効かないというのはおかしいという議論も当然あった。作用機序の理解が間違っているのではないかという事も指摘された。

にもかかわらず、わずか6ヶ月で日本での認可が下りた。アメリカで認可されたのは1年も経ってからだし、ヨーロッパではプラセボとの有意の差が証明できずに認可申請を取り下げることまで起こった。当時、イレッサはそれほどまでに効かない薬だったわけだ。それを無理やり異例のスピードで認可したのは明らかな拙速である。

後日わかったことは、作用機序が間違っており、イレッサは実は、EGFR遺伝子変異をもつ非小細胞肺癌に対してのみ効力を発揮する薬だったということだ。適応症を限定すれば95%の奏効率を示し、確かな効力があるのだ。だから現在もイレッサは使われ、こういった限定された適応症の人たちは恩恵をこうむっている。これを逆手に取って、イレッサ裁判はイレッサで恩恵を受けるべき患者の権利を踏みにじる行為だと非難する人たちまで現れているが、それはお門違いもはなはだしい。

しっかりと治験を行い、正しい適応症を同定し、副作用についても発生率を明らかにしてから認可すべきだったと言う主張のどこに問題があるのか。発売が、1年遅れたとしても、現在イレッサの恩恵にあずかっている人たちには全く影響がない。発売当時の適応症に対しては「効かない」薬だったのだから、もちろん当時としても、認可の遅れが問題ではない。

効かない薬を飲まされ、その副作用で殺された人たちが何百人も出たことこそ大問題なのだ。

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