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原発ゼロはすぐできる [原発]

福島の原発事故を受けて、多くの人は脱原発を志向している。しかし、その手順については10年とか30年とかに日延べした提案があり、迷いが生じているのも現実である。30年計画などというものが達成されたためしはなく、原発を無くすのならば直ちになくすしかない。ここでは、原発を直ちにゼロにした場合に何が起こるかを検討する。

1. 日本の電力需要
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 左の図は電力販売量を年度毎に示したもので、長く日本の電力需要はかなりの勢いで増加していた。2011年には震災による落ち込みがあるが、停滞ないし減少への変化が震災以前の2007年頃から起こっている事に注目する必要がある。この原因の1つは「不況」と考えられる。しかし、それまでの、まだ電力需要が伸びている時も、決して「好況」ではなかった。好況不況と電力消費は必ずしもすぐに結びつくものではなさそうである。
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2012年の統計はまだ完結していないが、月別の比較はできる。震災直後からかなり厳しい電力制限をした2011年度に比べて、電力制限ははかなり緩和されたはずだ。2012年度は工場の稼動制限などをしていない。確かに夏場の冷房需要などがかなり増えている。しかし、2011年よりもさらに減っている月もかなりあり、通年ではあまり変らない。これは、一体どういうことなのだろう。

この一年で、省エネがさらに普及し、不要な電力の見直しなどが行われた結果である。「不要な電力は使わない」ことが、常識として定着し、不要な時には機器を停止することが一般的になった。これまでは、漫然と電力を浪費する状態が続いていたと考えるべきだろう。省エネ機器への転換も進んだ。この変化は2007年頃から始まり、「省エネ」である。LED照明やインバータモーターなど省エネ技術の普及が大きい。

日本のこれから先数年の電力需要を考えてみると、さらに省エネが進むことは確実で、産総研の歌川学氏の試算ではまだ省エネ余力は30%あるということだ。産業形態も変化しており、大電力需要の産業が急増するとは考えられないので、経済が好況側面に移ったとしても大幅な電力需要の増加はかなり長いスパンにわたり見られないと予測される。ある意味で現在は脱原発にとっての好機なのである。

2. 原発の現状
 日本の原発は再稼動された大飯原発3号炉4号炉を除いて全て停止している。これらは117万kWの出力である。2012年の夏は、猛暑が続く中、「大飯原発三号機と四号機(合計出力は236万kW)の再稼働をしなくても電力不足には至らなかった」という結果が出ている。今夏の関西電力管内の最大電力需要は2681万kwで、関電が想定した2987万kW(2010年猛暑を基にした予測値)に比べて306万kwも少なかった。

 関電が五月一五日の同会議に提出した資料をみると、確実な電力供給量は2542万kw(内訳は火力1472万、他社融通644万、揚水223万、水力203万各kw)に対し、最大電力需要予測は2978万kw。需給ギャップは445万キロワットだったが、これを周辺の電力会社から余剰電力を回してもらう「他社融通」の上乗せ(最大162万kw)や自家発電の活用、節電の徹底などで埋める対策が列挙されていた。会議の冒頭で関電の副社長が「停電はしません」と宣言をしたのはこのためだ。

 実際の電力需要は、関電の予測を大幅に下回り、需給ギャップは三分の一以下の139万kWにすぎなかった。再稼働分(236万kw)がなくても凌げたということだ。2012年が近年平均に比べても猛暑であったことを考えれば、来年に関しても、夏の需要ピークは十分乗り切れることになる。多くの企業では、震災後自前のジーゼル発電機を購入した。通産省の統計ではこの総計は1000万kWになると言うから、ピーク時に節電を促すため電気代を値上げしただけで工場の買電量はごっそり減るだろう。来年も原発なしで乗り切れることは全く疑いがない。

3. 今後の電力増強
 それでも電力は十分余裕があるほうがもちろん望ましい。今、すでにいくつかの火力発電所の増強が行われている。一番需給が逼迫している関西では。姫路第二火力の一号機48.65万kWが11月に試運転を終えて来年から運転を開始する。2号機も来年中に運転に入る。2014年に3,4号機、2015年に5,6号機が運転の見込みだ。関東でも川崎火力の70万kWが2013年に稼動するし、続いて幾つかの火力発電所の稼動が予定されている。これだけでも電力需要は十分に確保されていることは明らかだろう。これらは震災の前に将来の電力重要を過大評価して計画されたものだ。

重要なのは、これらの新しい発電機はコンバインドサイクルといわれる天然ガスを使った高温のガスタービンと廃熱で作った蒸気によるタービンを両用した熱効率の高い発電機だということだ。効率は60%を超えており原発や従来の火力発電の33%をはるかにしのぐ。当然、発電コストも下がり、事故の対策費を含めれば原発よりも経済的である。現に、アメリカではこのタイプの火力発電が主流になってからは原発の建設が一基も行われていない。英国でも議会報告で最も経済的な発電方法は原発ではなくコンバインドサイクルのガスタービンであることが確認されている。この比較には原発事故処理の費用を考えていないから、それを含めれば、原発は非常にコストの高いものだと言える。

ウランも天然ガスもどっちみち100%輸入である。政治家が、原発が止まると化石燃料の輸入が増えて何兆円もの資金が輸入のため失われると発言していたが、ウラン燃料の輸入が減るのだから、これは詭弁でしかない。実は、輸入の増加は円高是正のためにはむしろ好ましい。天然ガスは石油よりも埋蔵量がはるかに多く、ウラン資源と比べても遜色ない。海底のメタンハイドレートが天然ガスの代替となる可能性もあり、あと何十年かはガスタービン発電の増強で電力はまかなえると考えてよい。

太陽光発電も、にわかに注目が集まり、現在100以上ものメガソーラーの建設が進行中であるが、来年の夏に動いているものは1万kW程度にすぎない。しかし2014年からは数十万kWになると見込まれる。風力その他の発電もあと数年で、実際に電力供給と云える段階に達するので、これらの実用化とともに、温暖化防止策として、ガスタービン発電も減らしていけるのではないだろうか。発電に関するエネルギー収支を見ると大体次のようになる。
供給(1E15 J) 消費(1E15 J)
原子力 2495 発電損失 4953
水力 685 配送損失 387
天然ガス 2347 家庭 2154
都市ガス 60 業務 1236
石油 564 産業 1189
石炭 2086 自家発電 -1682
合計 8237 合計 8237

最大のエネルギー消費はなんと「損失」なのである。コンバインドガスタービンのように飛躍的に効率を上げられるものの導入は大きい。天然ガスはCO2の排出も少ないので地球温暖化対策にもなる。日本がこの分野で遅れをとったのは原発に偏ったエネルギー政策の結果に他ならない。照明やモーターにもまだまだ省エネ技術を適用する余地が残されている。

4. 結論
現在実用化されている技術だけでも30%の省エネが可能なのであり、原発への依存率が30%程度であったことからだけでも、原発は直ちに廃止できることが明らかである。地震国日本での将来のことを考えれば、むしろこのまま再稼動を一切させず、即時原発を廃止して、30年後に新しい技術で原発の可能性を見直すのが賢明だろう。燃料資源枯渇の問題には、核融合やトリウム溶融塩炉あるいは、高速増殖炉といった新しい技術の可能性はいずれも拒否すべきではない。稼動はしなくても原子炉の研究は続けなければならない。それが、安全な廃炉にも必要である。
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