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「攻めの農業」 --- TPPの「あかるい」未来 [経済]

ついに安倍内閣がTPP参入を表明した。アメリカの要請により、長年票田となって自民党を支えてきた農民を切り捨て、大資本への忠誠を表に出した。時代の流れを読み取った動きではある。どのように試算してみても農業への打撃は大きい。一方、輸出産業といえば、自動車の米国関税がなくなり、さらに販売価格を下げて売りまくることができるというのだが、それは僅か2.5%に過ぎない。2.5%も総額が大きいから金額にすれば大きい。自民党は情け容赦なく金額が大きいほうを取ったのだ。

この政府説明の中で「攻めの農業」という言葉が出てきている。関税がなくなると言うのは、農業産品を輸出するのにも有利だから頑張れということだ。現在の農業の実態を見ればそんなことはできるはずがないのは明らかで、農業はなんとか食糧自給のために守らなければならないというのが今までのコンセンサスだった。守りの農業を放棄する宣言になる。

では「攻めの農業」と言うのは単なる口からでまかせかと言うと、そうでもないという所に恐ろしさがある。具体的なキーワードとしては「農業会社」「大規模化」となっている。どのようにして「攻めの農業」が実現されるのかを妄想してみよう。

TPPで農業経営が成り立たなくなると、農家は壊滅していく。いくら生産しても安い輸入作物にはかなわない。多くの農家は、出稼ぎなどで生計を立てるしかなくなり、耕作地は売却される。またぞろ規制緩和を言い出し、一部の農地は宅地などに転化するが、農地としてしか使えない土地の地価はどんどん下がって行くだろう。

日本の農地は10aで100万円程度だが、アメリカの農地は目下のところバブルで値上がりしているとは言え、1エーカー1万ドル(10aで25万円)程度だ。日本だって農地に使い道がなければアメリカ並みには下がる。「農家」はなくなり、農村は極端に過疎化する。景観も変わり、水田の破壊は水の流れを変えてしまうが、そんなことは知ったことか、金融資本が出資して、農業会社がこの農民たちが、涙ながらに手放した元の農地を安く買い叩いて手に入れる。アメリカ並みの広い農地が生まれる。

多くの農民が、なんとか食いつなぐために都市労働者となっていくので、求職者が増えて失業率は増大し、賃金水準は今よりもさらに下がっていく。規制緩和で最低賃金などというものはあって無きがごときものになるかもしれない。農業会社はこの安い労働量を取り入れる。農業は季節によって忙しさが変わる業種だ。だから収穫のときなどだけ人員を増やしたりできる派遣労働が農業会社の主体だ。

派遣会社は都市で失業者をかき集めて、バスで農業会社に送り込む。もちろん雇用はその日の天候次第だ。人件費ゼロの日もあるから、平均時給300円くらいで必要な時だけ働かせたのと同じことになる。土地も安く手に入れられば、農業機械は十分に装備できて、大規模経営で機械化も進む。農業会社はアメリカよりも安い価格で農産物を作ることができるのだ。しかし、都市労働者の賃金は下がっているから、そういった農産物でもなかなか売れないのは当然だろう。売れないから農産物の値段がさらに下がるかというとそうではない。ここで「攻めの農業」が出てくる。

国内の食料不足は放置して、農産物は輸出される。TPPで自由に輸出できる強みがあり、農業会社は農産物をもっと高く買ってくれる国に輸出する。農業会社に出資した金融資本は、目論見どおりに利益を手にすることができる。TPPで「攻めの農業」となり、経済は潤ったことになる。もちろん、政治献金は欠かさず、得られた利権は将来にわたっても確保されることになるだろう。

このようなTPPの未来を妄想だと断言できますか?


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