SSブログ

おかしな放射線安全説----物理学会 [原発]

物理学会誌3月号が泉雅子さんの「放射線の人体への影響」という解説を載せている。ガンの発生に関する知見は得るところが多い。「実は、我々の体内では、酸素呼吸により反応性の高い活性酸素が常に発生しており、放射線を被爆しなくてもDNAは絶えず損傷を受けている」ということで、なんと一個の細胞で二本鎖切断も1日最大10箇所ほども生じているというのだ。

この結果人間には「加齢と共に突然変異が蓄積して行く」というのには疑問が残る。右手と左手ではDNAが違うのだろうか? 突然変異は簡単には起こらないことを基にした人類起源20万年説はどうなるのだろうか?

ともかくも、DNAの損傷・修復というのは、私などが考えていたよりずっと起こりやすいもののようだ。損傷は活性酸素によるものであり、放射線は、もともと他の原因で生じている活性酸素を少し増やすだけだということになる。著者は、これをいかに放射線の影響が少ないかを述べるのに使っているように見える。

しかし、このモデルこそ、逆にしきい値が存在しないことをはっきりさせるものではないかと思える。20mSVの放射線は、1日10回起こる二本鎖切断を0.002個所増やすに過ぎない。修復機能は、様々な原因で出来る切断をまとめて作用する。だとしたら、10.002個所では影響が全く無く、100mSVに対応する10.010個所になると閾値を超えて、とたんに影響が出てくるなどというのは議論にもならない。

もともとが10箇所で大きくふらついているのだから、しきい値があるとすれば、それは50箇所とか100箇所になり、非常に高い放射線レベルの話にならざるを得ない。低線量でしきい値を設定することはできない。ところが著者は前のページで図解まで入れて、「100mSより低い線量では発ガン率の増加は確認されていない」ことを強調して、100mSV以下に閾値があることを示唆している。矛盾でしかない。

「確認されていない」も納得できない。確かに放影研のデータはばらついており、ガン死亡率の増加は見方によるが、100mSVで大きな変化は無い。100mSVで増加を認めるなら50mSVでも認めなければならないと言うのが公平な見方ではないだろうか。

根拠の無い100mSVしきい値説を基に、今回の福島原発事故の健康影響は全く無いとしているのにも異論がある。積算で10mSVを超える人は10万人くらい(大雑把!)いるだろう。1000SV・人なら放射線ガンで死ぬ人の期待値は4人になる。大勢の中には非常に運の悪い人もいるということだ。確率だから4人に決まっているわけではない。4人、3人の確率が19%で、これが6人になる確率も10%ある。誰も死なない確率も1.8%あるが、これは10人死ぬ確率と同じようなものだ。

もともと10万人中3万人がガンになるのだから、いまさら4人を問題にすることも無いというのは成り立つ議論ではあるが、それを受け入れるかどうかは感性の問題だろう。誰もその4人にはなりたくない。10万人中1000人を殺すと分かっている物を排出する設備(=自動車工場)が許されているのに、事故の排出物で4人が死ぬだけの設備(=原発)が許されないのはおかしいという議論も同様に成り立つが、判断は難しい。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。