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ガンはなぜ治るのか? [医療]

ガンは不治の病などと言われており、治らないのが当たり前なのだが、治ることもある。春ウコンとか、クロレラとか、枇杷の葉、はては様々なおまじないまで、ガンが治ったという証言には事欠かない。どれもかなりの事例があり、まんざらウソとも言えないから、なぜ治るのかが疑問となる。

ガン細胞が生まれるのは、活性酸素などでDNAが損傷を受けることが発端だ。二重螺旋構造で、多くの損傷は修復されるが、突然変異として残るものもある。残ったとしても、こういった異質な細胞は、ほとんどが増殖機能を失って自滅する。しかし、中には大きな増殖機能を持つものがおり、これがガン細胞だ。多くのガン細胞は免疫力で殺されてなくなるが、とりわけ増殖力が大きくて免役に打ち勝つものがあれば、際限ない増殖が始まり、これが成長してガンとなる。

このガンの成長に、一体どれくらいの時間がかかるものなのだろうか。この成長速度が、この考察のキ-ワードである。ガンの腫瘍を観察しても、その成長がやみくもに早いわけではない。やはり倍の大きさになるには3ヶ月から半年くらいはかかる。これから逆算するとガンは10-20ミクロンを大きさとする一個の細胞から始まって、1cmの大きさで発見されるまでに寸法で500-1000倍、つまり体積で125000000倍から100000000倍に成長せねばならず、27回から30回の細胞分裂が必要だ。これにはに7年から15年、ほぼ10年くらいかかることになる。

さて、ガンに対する現在の主流の考え方は、「手術派」である。ガンを根こそぎ取ってしまえばガン細胞は無くなってしまううと言う考え方だ。取りこぼしや転移による再発が最大の問題になる。ガン細胞は勝手に飛んで行けない。組織が大きくなり、腫瘍内部に血管やリンパ管を形成してから、これを辿ってあちこちにガン細胞を運ぶのだという説に基づき、早期手術こそがガン征圧の決め手だとしている。手術後5年が目安で、それまでに転移がなければ大成功としているから、この場合、先ほど検討した成長速度よりも早く、発生から発見までは5年以下でなければならないことになる。実際、5年では短いが7、8年転移がなければその後も無事に過ごせることが多い。


もし本当に10年以上かかるのだったら、手術後に見つかる転移は、実はもっと前から起こっていたことになる。「転移をする前に早期手術をする」などと言うことは不可能だ。手術で体力を消耗することを避け、ゆっくり成長するガンとの共存を考えたほうが長生きできる。近藤誠先生など「放置派」の理論だ。放置しておいてガンの拡大が止まり、消滅することさえあるようだ。そういったものはガンの個性で決まるという。近藤先生は、転移せず成長が遅いガンを「がんもどき」と呼んでいる。「がんもどき」の場合、どんな怪しげな民間療法でも「治った」実績にはなる。


「放置派」は民間療法だけでなく「手術派」にも手厳しい。成功した手術は単に「がんもどき」を手術したに過ぎないことになるし、再発したガンが進行すれば、手術で進行を早めたことになる。逆に「手術派」からみれば、放置して成長したガンは手術しておれば治ったガンになるし、転移したのは、十分早く手術しなかったためになる。宗教が治らなかったのは「信心が足りなかった」と言うのに似ている。

というわけで、どちらが正しいかという決め手はない。ガンの成長速度がはっきりすれば、この論争に一定の決着がつくのではないかと思われる。ガンがどれくらいの成長速度を持っているものかが理論の分かれ道なのだが、両者を成り立たせることもできる。そのためには、ガンの成長速度は、始め早く、だんだん遅くなって行くと考えるのが良いのではないだろうか?そうすると3、4年でガンが現れることもあってよいし、10年経っても大きくならない事とも矛盾しない。

もともとヒトの細胞にはヘイフリック限界と言われる分裂回数の制限があり、大体60回くらいで分裂しなくなる。分裂毎に遺伝子の端末部分であるテロメアが短くなり、一定以下になると分裂しない。ガン細胞はテロメアを自分で延長してしまうと言うことだが、テロメア酵素にも限界があり、完全というわけにはいかないだろう。

ガンの細胞分裂がだんだん遅くなるとすれば、放置しておいてもいつかは縮小することになる。こういったガンがかなりあるというのが、放置して直る場合のことだ。ガンが縮小する前に体力が尽きればガン死となる。手術や放射線、抗がん剤で人工的にガンを縮小すれば、自然に縮小することが始まるまでの時間稼ぎができる。ただし、体力の消耗が伴うなら、逆効果もありうる。様々な民間療法も、体力を強化して、ガンの縮小が始まるまでの時間稼ぎにはなるだろう。おまじないだって、気力を高めて、時間稼ぎには有効なこともある。というわけでガンが様々な方法で治ることもあることは理解できる。

ガンが最も純粋な形であらわれるのが血液ガンだ。これは固形ガンのように組織をもたないから、体力とか機能強化があまり影響しないし、急性の場合勝負も早い。だから民間療法や宗教からは対象外とされることが多い。「末期ガンからの生還」はよくあるのだが、「末期白血病が治った」を謳う民間療法は見かけない。血液ガンの中でも慢性骨髄性白血病(CML)は、最近ではイマチニブのような分子標的薬が開発されて、ほぼ確実に人工的にガン細胞の増殖を止められるようになったから、民間療法や放置療法の出る幕はない。

CMLの場合、3年くらい薬で増殖を抑制したあと、薬を止めても再増殖は起こらない場合がかなりある。この場合も、その間にガン細胞自体の分裂速度が遅くなったからだとすれば説明できるのではないだろうか。
------------------<追記>-------------------------



これについては、もう少し定量的な議論ができる。国立がんセンターが発表したガン余命のデータを仮説に基づいて解析してみた。ガンはなぜ治るのか(2)がそれだ。



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