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出口のない政策提言---産業競争力会議 [経済]

「経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議」というのが、現在の日本の司令塔になっている。首相などの閣僚と学者・社長で政策を議論する。学者といっても、元閣僚とかパソナの会長を兼任する竹中平蔵などだから、結局、企業に取って何がおいしいかを議論する場でしかない。

安倍内閣のいわゆる「第3の矢」が出てくるとしたら、ここしかないだろう。中間報告のようなものが出ているが、はっきり言ってどん詰まりでしかない。もっと法人税を引き下げて、会社の利益を増やすとか、労働条件を切り下げて利潤を得やすくするなどといった陳腐な提言が主だ。こんなことで物が売れないという根本的な問題の解決にならないことは明らかだろう。

ベンチャービジネスに投資した場合の損失補てんを言っているが、物が売れなければベンチャービジネス自体が成り立ちにくいわけだから、投資を促進しても仕方がない。すでに低金利の資金は、行き先がなく、有り余っている。低金利政策の資金はみな金融投資に廻ってしまっているのが現実だ。

今後、日本の人口は半減していく。個々の所得を倍増しない限りGDPは半分になってしまうことになる。このためには、もっと利幅の大きな産業構造に転換して行かなければならない。そのためには、単に研究開発を奨励するだけでなく、研究開発なしで利益を挙げる会社を淘汰して行かなくてはならない。

外食、宅配、派遣など近年大きくなった産業は全部、低賃金だけを食い物にして太ってきた産業だ。これが研究型の産業を絶えず圧迫する。なぜこうなったかというと法人税を少なくしたからだ。研究開発に対する減税はあるが、もともとの法人税が少なければ、まったく魅力がない。研究開発費はどんどん少なくなっている。法人税はむしろ引き上げるべきなのだ。

そもそも法人税は、給料や原料費などを払って、なお利益が出る場合に課せられるものであって、採算にあえいでいる会社には関係がない。技術開発中心の会社は経営が苦しい。こういった企業を救うことが課題なのだが、まったく考慮されていない。法人税の減税などというのは、儲かっているろくでもない会社に、さらに儲けさせるものでしかない。

研究開発のやり方として、日本版NIHなど研究の司令塔を作る提言もあるが、これも馬鹿げている。研究は司令塔が指示すれば出来るものではない。地道に研究環境を作って、個々の研究者を自由に研究させて、やがて出てくるかも知れない成果を待つしかないのが当たり前だろう。研究者に対する締め付けを止める事こそ必要なのだ。研究が経済対策に直接結びつくとは考えないほうが良い。長い目で見れば絶対に必要なものではあるが、非常に息の長いものだ。

即効性があるのは技術開発力の強化だ。日本の製品は、大発明と言うよりも、むしろ、名もない多くの技術者たちによって品質の向上、工夫の積み重ねがなされて競争力を獲得した。ところが昨今のリストラで、こういた現場技術が、派遣労働化やパート化のために失われてしまいつつある。現場技術をどうやってリストラの嵐から救い出すか、どうやって分厚い技術者の層を確保するのか、これが最大の課題なのだが、産業競争力会議は全くそれに触れていない。

出口がなく、同じところをぐるぐる廻るだけの会議であるといえる。

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