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TPPの謎---自動車関税 [経済]

TPP交渉が難航していると言う。その中でアメリカ側は自動車関税で譲らないなどとも聞こえる。全ての分野で関税をなくして行こうというのがアメリカの主張ではなかったのか。これはある意味で不思議だ。

アメリカの乗用車関税は2.5%でしかない。しかも90%は現地生産なのだから、実質上この2.5%が大きく輸出入に響くとは思われない。これで国内自動車メーカーが大きな打撃を受けるとも思われない。なぜこれに固執するのか、その理由を考えてみよう。

実は、この2.5%が現地生産日本車の価格を規定している。このお蔭で、アメリカで生産した車の価格が2.5%高くなるのだ。これが大きい。自動車生産コストの10%が労働コストだといわれているから、2.5%の上積みは給与水準の25%アップにつながる。事実アメリカの日系自動車メーカー労働者の賃金は日本に比べて25%方高い。2.5%の関税は、アメリカ人の生活水準を日本人より高めるために必要なものなのだ。だから全米自動車労組などが強く撤廃に反対している。

アメリカは自動車関税を維持すると言っているのではない。20年後にはなくすとは言っている。実はすでにNAFTAがあり、メキシコなどから輸入すれば関税はかからない。トヨタやホンダは、メキシコに大きな工場を建設して、アメリカで行っている現地生産をメキシコに移すつもりだ。このまま2.5%を続ければ、どっち道20年後にはアメリカ工場はなくなり、2.5%の関税で労働賃金を確保するという労働組合からの圧力はなくなるからだ。

アメリカにとって、むしろ重要なのは「非関税障壁」と称する対等な条件だろう。アメリカ車に有利になるよう国内制度の変更を求めている。関税は交渉のためのテコにすぎない。軽自動車減税の廃止とか、車検基準の緩和とか、安全や環境を度外視した特例の要求だ。こういった要求を全部受け入れたとしても、やはりアメ車は日本で売れないだろう。基本的には性能の割りに値段が高すぎるからだ。自動車の製造は、労賃の安い国に移行していく。

だから、TPPの主要な力点は、農業製品と保険ビジネスにある。日本の農業市場と医療・保険市場を支配するためには、何でもやる。自動車はたんなる取引材料にすぎない。アメリカ政府は、一応、将来のことも考えた戦略を持って交渉に臨んでいるのであるが、日本政府には、そういった戦略の片鱗も見えない。農民の生活にとって死活問題である農産物関税の値下げに、いとも簡単に同意しているようだ。医療・保険の分野は、頑張る様子すら見えない丸呑みらしい。交渉難航と言っても単なるパーフォーマンスで、結局認めるための儀式でしかないのが見え見えだ。

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