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大阪都の破綻--民主主義は素晴らしい [政治]

大阪で大阪市解体の住民投票が行われ、大阪都構想の破綻が決定的になった。橋下は政界引退を表明し、松井もそれに続くかのようだ。橋下は、敗北の弁で「民主主義は素晴らしい」と言った。彼によれば、国の体制を揺るがすような大きな改革に挑戦して敗北しても命を取られる様なことはない、と現下の資本主義体制を賛美したものだ。何のことはない。道州制につながり、憲法改悪など安倍政権の意向に沿ったものなのだから、大阪都構想は体制を揺るがすようなものではない。多少道筋が違うだけの事だ。

しかし、今回の投票結果に、「民主主義は素晴らしい」という事を感じる点では、僕も共通する。

民主主義に対する批判は、衆愚政治に陥ることだといわれている。「決められない政治」とか、党利党略が優先するなどというのがその最たるものだ。賢いリーダーに権限を与えて、決められる政治を期待する向きもある。橋下の登場はこういったファシズム志向の表れである。

優秀なリーダー、名君による政治は効率が良い。しかし、こうした「リーダー」が、結局は大惨禍を生み出した歴史に学び、人類は王政や独裁を否定するようになったのである。馬鹿であろうと天才であろうと、金持ちであろうと貧乏であろうと、すべての人に一票を与える。大衆は、結局は正しい判断が出来るという信念が民主主義の根底にある。今回の投票結果はこの信念を強めるものであったと思う。

世論調査でも大阪都構想は、当初優勢であった。中身よりも、橋下人気がそれを支えていたのは明らかだ。世論調査で賛成が多かったころ、「5区への区分けを知っていますか」と言う質問に「知っている」と答えた人は少なかった。つまり中身を知らずに期待していたわけだ。それが、終盤になると「知っている」と答える人がだんだんと増えていき、それとともに反対が増えていった。中身がわかってくると反対が増えて行ったのだ。

「二重行政の解消で浮く金はわずかだ」「都にする経費が民政を圧迫する」「大阪市の税金が府に吸い取られる」こういった批判が出てきても維新はそれに対して具体的な論拠を挙げての反論を展開できなかった。「大阪都は素晴らしい」「橋下はエライ」を繰り返すばかりだったと言える。膨大な税金を使って大阪都構想を宣伝する説明会を繰り返したが、説明すれば説明するほど反対が増えて行った。終盤になって、維新の党は全国動員をかけて、宣伝を繰り広げた。しかし、批判に対する有効な反論はなく、「大阪都は素晴らしい」「橋下はエライ」の繰り返しばかりだった。

なぜ、そのような事になったのかと言えば、選挙ではいつもこのやり方で勝ってきたからだ。
短期間で、反論の機会も与えられない選挙では、知名度とイメージで勝負が決まる。じっくりと政策を議論することなどない。維新や自民党の議員で、選挙中に戦争法案賛成を前面に立てた候補は一人もいなかった。地球の裏側で自衛隊員を戦死させることに意義を見いだせるはずもない。もっぱら産業誘致とか新幹線駅をつくるとか、別の話題に終始していた。

こんなことで選挙民は簡単にごまかされるものだった。増税、軍拡、福祉後退と国民を愚弄するような政治を進める安倍政権が、選挙のたびに勝利していることも、民主主義への確信を強めるものではあり得なかった。果たして日本人は、まっとうな判断をできる賢い国民になれるのだろうか。

しかし、大阪都構想については、2年位にも渡って、議論が展開された。その結果、中身がどうなのかが染渡り、都構想の否定につながった。選挙機関が極端に短く、規制だらけの暗闇選挙では、大衆は目眩ましに会うが、じっくりと考えることが出来れば正しい判断が出来る。そのことを示したのが今回の投票の結果である。今回の投票は憲法改悪の予行演習だという意味合いもあったらしいが、憲法についても、じっくりと議論されれば、自民党草案などは、否定されるに違いない。民主主義はすばらしい。
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