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MRJの初飛行 [技術]

国産ジェット旅客機MRJの初飛行が話題になっている。重苦しい経済状況を伝えるニュースばかりの中で、久々な明るいニュースと言える。日本の家電が次々と落ち目になり、現在は自動車だけが経済を牽引している状態だが、韓国や中国に追いつかれるのは時間の問題となっているから、航空機という分野に活路を見出したくなる。

航空機に進出するという発想そのものは陳腐であり、日本は過去にYS11という旅客機を国の主導で開発したことがある。国内線ではかなり普及したとも言えるが、結局150台程度で生産を終了し、合弁で作った航空機会社は解散してしまった。制作費が高く、蓋をあけて見れば赤字生産でしかなったのである。航空機会社自体が、関係各社からの出向による寄り合い所帯、というより、天下りの巣窟であり、経営も杜撰だった。

当時は、日本の技術に対する国際的な信用度も低く、実際、振動や操縦性の悪さなどの欠陥も露呈していたし、技術的にも古さの目立つものだった。MRJについては、複合材料を使うなど、最新の技術を駆使しており、他に比べて見劣りのするものではない。経営の環境も、今度は三菱重工だけへの肩入れであるから、異なっている。だから期待が高まるのであるが、気になる点も多々ある。

そのひとつは、相変わらず国のテコ入れで成り立っていることだ。この開発には1000億円の税金が投入されている。こういった場合には必然的に政治家や官僚がからんで、非効率を導き入れるものだ。そういった非効率を許すほど国際的な競争は甘くない。YS11の轍を踏む懸念は十分にある。

100人以下を乗せる旅客機は、すでに各国が生産しており、カナダのボンバル、ブラジルのエンブラエル、フランスのエアバスなどが高いシェアを占めている。これにロシアのイリューシン、スホーイ、さらに、中国のAVICIが競合する。こういった中で、MRJが経済的に成り立つためには700機ほどもの売上が必要だ。これに対して現在の受注見込みは、300機程度でしかない。中国のAVICIはすでに300機を受注している。前途が楽観できないのが現実ではあるが、これは頑張りを期待するしか無い。

日本の航空機技術ということからは、むしろホンダのhondajetのほうが、期待できるかもしれない。7人乗りの小型機ではあるが、革新的なデザインで、この種の飛行機としては、最も速く、最も高度がとれ、最も燃費が良いと評価されている。この夏に型式認証されて、いよいよ販売開始だが、すでに再来年出荷分まで予約が詰まっているという。実はこれも問題がある。開発・生産がすべてアメリカで行われている点だ。確かにホンダ資本ではあるし、日本の技術者が開発に貢献はしているが、これがどの程度日本の航空機技術として国民生活や経済に影響を持つかは疑問だ。国内で開発。生産できないことがもどかしい。日本に、こういった技術開発の基盤が失われていることを示している。

日本の技術発展に期待したい。しかし、低賃金を押し付け、技術者を切り捨てている現状では、日本での航空機産業の発展を期待するのが空しいような気さえする。
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