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北朝鮮の未来 [北朝鮮]

核実験やミサイルで世界の嫌われ者になっていた北朝鮮が一転して平和主義を打ち出すようになった。米朝会談でも南北会談でも「我々に核やミサイルはいらない」と明言している。唖然とするような変身ぶりで、制裁解除のための方便だとする見方も根強い。しかし、北朝鮮は確かに非核化の道を歩み始めている。なんとしても制裁を解除してほしいという態度は見せていない。自らの方針として武装解除を宣言したのである。

北朝鮮は朝鮮戦争以来、ずっと戦い続けてきた。国を守るためには軍事力を強化するしかない。国力に見合わない核兵器開発のために国民生活は多大な犠牲を強いられてきた。しかし、北朝鮮の軍事力など大国から見れば物の数ではない。武力で国を守るなどと言うことに展望が見えなくなったのは事実だろう。

金正恩が、世界の政治問題がもはや軍事力で決着する時代でなくなった事に気が付いたとすれば、それは卓見である。アフガニスタンにせよシリアにせよ強国が弱小国を下して問題が決着する時代でないことは明らかだろう。軍事力によるパワーポリティックスはもはや過去のものになった。アメリカも自ら核廃棄をする国に攻め込むことは出来ない。そう読み取ったのならば、軍事費の増強ばかりを考えるアホ晋三なんかより、はるかにスケールの大きい政治家だ。

北朝鮮が軍事から民政に方向転換して、果たして展望があるのだろうか。北朝鮮は経済制裁を受けて久しいが、この間、年3.9%のGDP増加を維持している。これは非常に大きな経済成長ではないが、多くの開発途上国ににとってはうらやましい数値だろう。これが方向転換に踏み切る自信を与えたのだと思う。

アフリカや中東の多くの国は、経済の立ち上げに苦悩している。資源を持ちながらも、それが活用できない。どの国でも、工業化はまず、雑貨や繊維などの軽工業から始まるのだが、近年はそれが難しい。先進国が大量生産した商品が安価で流れ込み国内でこういった軽工業の立ち上げが起こらないのだ。いつまで経っても観光しか売りがない状態が続くエジプトで起こった観光客に対するテロなどは、そういった状況に対する若者の苛立ちをしめすものだ。

日本は江戸時代の鎖国体制により、何でも必要なものは国内生産することになった。鎖国で培われた技術、文化の蓄積が開国後に一気に花開いたのである。現代はあまりにも運輸・通信が進み、低レベルからの産業の立ち上げが出来なくなってしまっている。できることなら、しばらく鎖国するのがむしろ望ましいのだがそれは出来ない。北朝鮮に対する経済制裁は実質的には鎖国状態を作っている。北朝鮮では、ミサイルを作るために、ネジ作りから国産が行われた。石鹸も衣類も、輸入でなく国産が行われ、これが軽工業を立ち上げさせ、一定の経済成長と技術蓄積をもたらせているのだ。

北朝鮮には将来的な資源の展望もある。鉄鉱石と石炭が国内にあることが大きい。これはイギリスで産業革命を引き起こしたものだ。普通に貿易ができる国の場合、資源があっても今の時代に鉄鉱石と石炭の産業は起こせない。洗練された外国製品の流入に太刀打ちできないからだ。しかし北朝鮮は鎖国状態に置かれることで産業革命をやることができる。北朝鮮は経済制裁を産業の立ち上げ、経済発展に利用することができるのだ。

独裁政権と言うのは国民には苦痛だが、経済発展にとっては必ずしも害悪ではない。決断が早く一部に生じる不満を押さえつけることが出来る。イラク経済はフセインの元でそれなりに発展していたのだが、「民主化」で潰れた。中国の急速な経済発展もいわば独裁政権のたまものだ。旧ソ連はスターリンの独裁のもとで目覚ましい発展を遂げた。

これまで軍事に使われていた開発力を強権で民生に回せば、確かに工業発展が期待できる。しかし、豊かになった国民は必ずさらなる豊かさと自由を要求するようになる。金正恩が民生重視転換で国民の満足を得られるのが早いか、国民の意識向上で批判が高まるのが早いかどちらかである。

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