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放射線の規制値を下げるという御用論文 [原発]

福島で除染という事が行われている。人の住めない土地の放射線量を減らして無理やり「安全」にすると言う作業だ。家の周りの汚染された土を入れ替えて放射線量を減らす。どこまで減らせばいいかという基準として0.23μSv/hが定められた。

ところがである。実際問題としてこれを達成する除染と言うのは難しい。放射線は、家の周りの土からだけでなく、裏山の森からもやってくる。合計で0.23μSv/h以下にするには相当広範囲の土を入れ替えねばならない。あばら家の周りの除染に何億円もつぎ込むことになる。少し放射線量の低い所に新築の家を建てた方がよっぽど安い。

しかし、国も自治体も除染にこだわる。「安全」な土地になったと言う事をどうしても示したいのだ。この馬鹿馬鹿しさは現場でも当然意識されており、関係者の間では、そこまで下げなくてもいいのではないかと言う声が絶えない。そうなると、こういった「要望」に応える学説が現れる。残念ながら曲学阿世の輩は世の常である。今ではほぼ否定されているが、100μSv以下ではガンにならないといった学説もあった。

自治体が住民にガラスバッジ線量計を配って、実際に浴びた放射線量を測った。このデータを使って放射線量の高い所に住んでも、実際に浴びる放射線量は低いという結論を出したのである。実際のデータであることを強調し0.23μSv/hは4倍の余裕があるとする。

しかしながら、この議論は根本的におかしい。確かにその場所の放射線量と実際の被ばく量はちがう。家の中にいれば遮蔽されて屋外よりも被ばく量は少ない。一日8時間以上も屋外で過ごす人はあまりいない。0.23μSv/hの根拠と言うのは、毎日8時間を屋外で過ごすと仮定して、被ばく量が年間1mSvになる値だ。

これに対して、実際の被ばくデータと言うのは平均値であり、これを規制値として用いたならば半数の人が年間1mSvを越えてしまうという価である。全く比較の対象にならない。<平均値>と<規制値>のすり替えがこの論文の全てだ。

データそのものにも問題がある。住民は外に出るときは必ずバッジを身に着けるように言われているが、これを励行した人がどれだけいただろうか。自治体は何の断わりもなく、住所、氏名、年齢などの個人情報を提供してしまっている。この事も規制値を下げたがっている自治体・東電との癒着を示すものだ。

論文を書いたのは僕も面識がある素粒子研究者だが原発や放射線とは関係がなかった人だから中立と思われる分だけ悪質である。本人は直接「社会」の役に立つことをして見たかったと語っているが、彼にとって「社会」とは何だったのだろうか。高放射線量が残る土地に帰還を強要されている住民が見えず、こんな論文で晩節を汚すことになったのが残念だ。

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