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「攻めの農業」 --- TPPの「あかるい」未来 [経済]

ついに安倍内閣がTPP参入を表明した。アメリカの要請により、長年票田となって自民党を支えてきた農民を切り捨て、大資本への忠誠を表に出した。時代の流れを読み取った動きではある。どのように試算してみても農業への打撃は大きい。一方、輸出産業といえば、自動車の米国関税がなくなり、さらに販売価格を下げて売りまくることができるというのだが、それは僅か2.5%に過ぎない。2.5%も総額が大きいから金額にすれば大きい。自民党は情け容赦なく金額が大きいほうを取ったのだ。

この政府説明の中で「攻めの農業」という言葉が出てきている。関税がなくなると言うのは、農業産品を輸出するのにも有利だから頑張れということだ。現在の農業の実態を見ればそんなことはできるはずがないのは明らかで、農業はなんとか食糧自給のために守らなければならないというのが今までのコンセンサスだった。守りの農業を放棄する宣言になる。

では「攻めの農業」と言うのは単なる口からでまかせかと言うと、そうでもないという所に恐ろしさがある。具体的なキーワードとしては「農業会社」「大規模化」となっている。どのようにして「攻めの農業」が実現されるのかを妄想してみよう。

TPPで農業経営が成り立たなくなると、農家は壊滅していく。いくら生産しても安い輸入作物にはかなわない。多くの農家は、出稼ぎなどで生計を立てるしかなくなり、耕作地は売却される。またぞろ規制緩和を言い出し、一部の農地は宅地などに転化するが、農地としてしか使えない土地の地価はどんどん下がって行くだろう。

日本の農地は10aで100万円程度だが、アメリカの農地は目下のところバブルで値上がりしているとは言え、1エーカー1万ドル(10aで25万円)程度だ。日本だって農地に使い道がなければアメリカ並みには下がる。「農家」はなくなり、農村は極端に過疎化する。景観も変わり、水田の破壊は水の流れを変えてしまうが、そんなことは知ったことか、金融資本が出資して、農業会社がこの農民たちが、涙ながらに手放した元の農地を安く買い叩いて手に入れる。アメリカ並みの広い農地が生まれる。

多くの農民が、なんとか食いつなぐために都市労働者となっていくので、求職者が増えて失業率は増大し、賃金水準は今よりもさらに下がっていく。規制緩和で最低賃金などというものはあって無きがごときものになるかもしれない。農業会社はこの安い労働量を取り入れる。農業は季節によって忙しさが変わる業種だ。だから収穫のときなどだけ人員を増やしたりできる派遣労働が農業会社の主体だ。

派遣会社は都市で失業者をかき集めて、バスで農業会社に送り込む。もちろん雇用はその日の天候次第だ。人件費ゼロの日もあるから、平均時給300円くらいで必要な時だけ働かせたのと同じことになる。土地も安く手に入れられば、農業機械は十分に装備できて、大規模経営で機械化も進む。農業会社はアメリカよりも安い価格で農産物を作ることができるのだ。しかし、都市労働者の賃金は下がっているから、そういった農産物でもなかなか売れないのは当然だろう。売れないから農産物の値段がさらに下がるかというとそうではない。ここで「攻めの農業」が出てくる。

国内の食料不足は放置して、農産物は輸出される。TPPで自由に輸出できる強みがあり、農業会社は農産物をもっと高く買ってくれる国に輸出する。農業会社に出資した金融資本は、目論見どおりに利益を手にすることができる。TPPで「攻めの農業」となり、経済は潤ったことになる。もちろん、政治献金は欠かさず、得られた利権は将来にわたっても確保されることになるだろう。

このようなTPPの未来を妄想だと断言できますか?


TPPがやってくる---保険制度はなぜつぶれるか [経済]

TPPの問題として農家が壊滅することが言われているが、もう一つ重要なのは保険制度の問題だ。日本郵便がアフラックに利権を売り渡そうとしているガン保険などのこともあるが、ここで言う保健とは、もっと重要な健康保険のことである。政府も「国民皆保険は守る」と言っているし、TPPに直接保険制度の改変が謳われているわけではない。一部賛成論者は、TPPの対象外である保険制度を心配するのは幽霊に怯えているようなものだと言っている。にも関わらず、保険制度が心配されているのは何故だろう? 

TPPが掲げるのは関税と非関税障壁の撤廃だ。企業が相互の国に自由に進出できることを保証しなくてはならない。すでに日米ではこの処置がかなり取られており、日本の自動車会社は勢い良くアメリカに進出しているし、マクドナルドやKFCなどアメリカ企業の日本進出も進んでいる。TPPはこれを完成させるダメ押しのようなものだ。残っているのは農業と保険業くらいのものだ。

農業は関税で保護されており、保険業は非関税障壁で保護されている。健康保険はアメリカでは非常に大きな分野で、大きな健康保険会社があり、政界にも強い影響力を持っている。世界にも進出しているが、日本には一歩も踏み込めていない。なぜなら、日本の健康保険は政府が運営する国民健康保険や会社の健康保険組合に限られており、民間の健康保険会社は事実上禁止されているからだ。

この非関税障壁はTPPでは撤廃せざるを得ない。民間会社が運営する健康保険も認めろということに必ずなる。多くの人は民間会社が運営する健康保険を許可することが国民皆保険の制度の破壊につながるとは考えない。むしろ、選択の自由があっていいのではないかと思うだろう。競争により、より良いサービスが提供されると期待する向きもあるだろう。

ところが実はこれが大問題で、健康保険というのは選択肢で競争を作ると成り立たなくなる代物なのだ。例えば、健康保険会社は、自己負担1割の新サービスを始める。しかも加入金は国民健康保険より安い。加入条件は過去3年間病院通いをしていない健康な人に限るとすれば、これは十分に成り立つ。すると健康な人はこぞってこの健康保険会社の保険に移る。結果として既存の健康保険は病気がちの人ばかりになり、収支が悪化して値上げせざるを得なくなる。健康な人は小額、病気の人は多額では保険の意味がない。保険料を払えない病気の人が多くなり、皆保険制度は破綻する。

保険制度を維持するために、金のかかる治療を切り捨て、どうしても必要なベーシックな治療だけを既存健康保険の対象とする混合診療が導入されるだろう。保険会社からは高度な医療までカバーする「商品」が売り出される。現在も、高度な先端医療は保険対象外だが、何年か経つと保険適用になったりする。しかし、高度な医療までカバーする「商品」が売り出されていると、保険適用化するのは明らかな政府による営業妨害になるから出来ない。

まともな医療は、健康保険組合や国民健康保険からは外れ、保険会社が提供する新しい「商品」を買わないことには安心して暮らせなくなる。それを買えない人はあきらめるしかない。実際、アメリカの健康保険の現状はそうなっている。アメリカ方式を日本にも波及させようというのがTPPの本質に他ならない。

アベノミックスで日本はどうなるのか [経済]

アベノミックスに関しては、いろいろと批判がある。

「アベノミックスが不評なのはなぜか」でも書いたように、アホノミックスと言われるくらい理屈が成り立っていない。通貨膨張も、投機マネーに吸収されて実際の物価上昇にはつながらないという見方もあるくらいだ。インフレターゲットが達成される前に通貨不安を引き起こすのが関の山などと言うのが大方の意見だ。

しかし、たまたま景気変動の回復期に当たっただけであるにせよ、現実に株価は少し上がったし、大企業の業績も、中には向上しているところがある。金が儲かった富裕層が高級品を買い出しているという観測もある。かつてリーガノミックスがそうであったように、時期がうまく合えば、心理効果だけでも、経済が上向きになったと評価される結果をもたらすことがあるのだ。

では、もしアベノミックスが公約どおり、うまく働いたらどうなるかを考えてみよう。年5%位のインフレになり、食料や衣服には金がかかるようになる。それに合わせて給料の方も5%くらい上がる。時給800円が804円になると言うわけだ。しかし、消費税が10%になったら、結局、生活は苦しくなるだろう。消費税以上に賃金が上がるというのは、想定外にせざるを得ない。

消費税を上げる代わりに法人税を引き下げて、世界で一番企業活動がやりやすい国にすると言うのが安倍首相の構想だ。法人税を下げたら、今まで赤字だった会社が黒字になるかと言うとそうではない。もともと、赤字会社には法人税がかからないのだから、赤字会社に税率はあまり関係ない。

円高になるから、部品を国外から調達していた会社は苦しい。材料を100円で輸入し、加工して200円で売っていた会社は、仕入れが120円になり、これを220円で売ることになるだろう。加工費100円を120円に値上げするのは難しかろう。値上げしなくとも、この加工費から消費税増加分がさし引かれる。多くの中小企業が、なんとか食っていくために、赤字を増やして行くことになる。

潤うのは、利益率は少ないながらも、低賃金で経費を抑えて、うまく利益を出していた会社だ。居酒屋チェーン、ファミレス、宅急便などは、ますますやり易くななる。派遣会社なんか、輸入部品もないので、円安の影響もない。大企業は、黒字に対する課税も少なくなるし、輸出による消費税の払い戻しも大きくなるが、設備投資をやる対象がないので、ますます内部留保を増やすだろう。

結局のところ、もの作りを担う中小企業はますます苦しくなり、パート・アルバイトを活用した低賃金労働で利益をあげる会社がますます発展する。トータルで、GDPの上昇を達成し、安倍首相が「アベノミックスは成功した」と主張する状況になるかもしれない。しかし、こういった低賃金産業が潤うということは、非正規労働人口がますます増大することになる。時給は、804円に上がるけれども、その多くは、月給30万円から時給804円に移行した人たちだということになる。

アベノミックスは、通貨不安を引き起こして失敗するだろうが、うまく作動したとしても、ブラック企業の雇用率を増やすばかりであり、総ブラック企業化政策に他ならない。



この僕でさえ富裕層と言われるならば----松浦勝人の迷文 [経済]

エイベックスの社長、松浦勝人がフェイスブックで富裕層を代弁して金持ちから税金を取るなと主張している。
社長の給与は4億5100万円。それに自社の配当だけでも1億8700万円。持ち株資産は95億円。多分公表されていない資産はこの倍はあるだろう。立派に富裕層だ。赤旗がこれに対する課税を計算しているが、ちゃっかり証券優遇税制10%を適用されるようにしているから、実際には50%でなく34%しか払っていない。実はもっと少ない。地位が高い人は会社の金で飲み食いし、運転手も車も会社の金だから、本当はこれも所得に入れるべきなのだが抜けている。結果的に富裕層の課税率は低いことになる。

一方貧困層はどうかと言うと、年収195万円なら所得税・住民税は15%。それに健康保険税、介護保険税の8.5%と消費税の8%を合わせると31.5%になる。何もしなくても、とられてしまう水光熱費も税金みたいなものだ。これを入れると貧困層の負担は40%となり、松浦勝人さんを上回る。貧困層のほうが課税率が高い。

もちろん松浦さんもたぶん健康保険は払うのだが、健康保険・介護保険は限度額があるから、松浦さんの場合は0.08%にしかならない。水光熱費も同じだ。消費税も、会社の経費で飲み食いするのだから、実際にかれの懐から出る分は少ないだろう。

これだけ優遇される富裕層天国の日本で、まだ文句を言っている。欲にはきりが無いということだろう。

この僕でさえ富裕層と言われるならば、富裕層は日本にいなくなっても仕方ない。という一文をコメント付きで引用しておこう。特に最後の一言が度しがたい。


僕は日本が大好きだが、<----そりゃそうだ金持ち天国だから
日本は僕らを嫌いなようだ。 <----まだ不足なのか
これから僕はこの国への期待よりも、より自分個人が日本国に頼らず頑張っていかなければならないという気持ちでいっぱいだ。<----福祉貧困国ではだれでもそうです。特に貧民は

貧困層の話題はよくマスコミに出るが、<----あなたもよくマスコミ・週刊誌に出てますけど
富裕層の悩みはほったらかしだ。<---麻薬とか女とか、残念ながらほったらかしにしません。
この国はあえていうなら富裕層に良いことは何もない。<--貧困層にはもっと良いことがない
そして貧富の差を問わず老後の安心など今のところ何もない。<---富裕層と貧困層では度合いがちがう
安倍政権になったことで民主党政権時代に決まった富裕層への最高税率の増税はなくなるかと期待したが  <---あほか、貧困層には消費税直撃だ
阿部内閣支持率向上の狙いのためか、たいした税増収にならないにも関わらず、富裕層への所得増税は決まり、地方税とあわせれば55%という税金が 所得にかけられる。<---34%でしょ。時給660円でも40%取られるんだぞ
そして、相続税も半端じゃない。<---何も残せない人も多い
うかつに死んだら家族が路頭に迷うはめにもなりかねない。<---何百億ももらって路頭に迷うかよ
国に頼らず、自分の事は自分で
準備しなければならない国になってしまった日本。<--準備できるやつはいいよ
僕としては、税金は個人の所得報酬に対して
50%という国との折半が我慢の限界だった。<---社員には低賃金は我慢の限界を超えている
所得税が20%代の国はたくさんある。相続税のない国もある。<--たくさん? いずれも住みにくい国ですね
こんなことをしていたら
富裕層はどんどん日本から離れていくだろう。<--出て行きません。日本にいることが贅沢の一部
僕の場合は会社もあり会社を辞めることは
不可能だから日本に居つづけなければならい。<--日本人からしか儲けを絞り取れない
今のこの国で自分が死んだ時には一代で自身を犠牲に築いた財産を ごそっと国にもっていかれることに納得出来るはずがない。<--ビル・ゲイツは遺産を社会に寄付する
この国の政治が僕らエンターテインメントの業界に何をしてくれたのだろう。<--この国の民からもうけ取った
ゲーム会社の知り合いのオーナーは会社を売る前に
シンガポールに移住した。<--多分ウソ、医療や言語で困ることが多いから移住しない
そういう人たちがたくさん出てきているし、
更に出てくるだろう。
それでいいのか??<--会社売って遊んで暮らすやつを作るな
成功した人たちのモチベーションは
更なる成功へと向かうのが義務で、<--そんな義務はない
いつまでたっても国に半分以上むしりとられ、<--あぶく銭だということをお忘れなく
それもどこでどう使われているのかもわからず、
払い続けるのが国民の義務だ。<--貧困層もなけなしの金をむしりとられている
成功しても自由はないのか。
それでいいのか。
成功したこと自体が不幸だったのかもしれない。<--よく言うよ失敗したけりゃすればいいじゃないか
こんなことをまじめに考えなくてすむのだから。
自由をもとるために努力し、成功しても、国にから半分以上税金として持っていかれてしまう。
金持ちになってどうするの? とホリエモンが本を書いていたが本当にその通りだ。
それも含め、僕は自分の事はこの国に頼らずに自分でやっていこうと思う。
まぁ、金持ちには金持ちの悩みがあるわけだが、
努力なくして金持ちになったわけではない。<--貧困層が努力していないと?
それは当たり前の事でしょ。
貧富の差を出してしまった責任をどこに問うべきか。
それは僕らのせいではないはずだ。<--給料を決めて格差を作っているのは社長です。あなたのせいです。

税金によらない格差の是正 [経済]

日本では貧富の格差がどんどん広がっている。ワーキングプアが増える一方で、富裕層と言われる人たちも増えており、このままでは社会崩壊しかねない。この格差を是正するために、富裕税の導入などが言われているが、なかなか実現しない。富裕層は政治力も持っているので、導入には抵抗する。 税金逃れの対策はいっぱいあるので、どの富裕層も上限まで払ったりしていないのだが、現在の所得税上限である50%を55%にすると言うだけでも抵抗は強い。「せっかく稼いだ金の半分以上を取られるのはおかしい」などという理屈は、それなりに説得力を持つからだ。

仮に所得税率の上限を60%にしたところで、実はその効果はたいしたものではない。年収手取り3億9350万円のDNP北島邦彦社長の場合、これが3億1480万円になるだけで、年収200万円の派遣社員との格差はいっこうに縮まらない。もちろん、税というのは出せる人が出すのが原則で、現在のように富裕層にだけ様々な節税手段が提供されているのは是正されるべきではあるが、所得税というのは格差是正の決め手ではないことは明らかだろう。

なぜ格差が生じるか? だれのせいでもなく、勝手に社会に湧き出してきたもののように言われているが、そんなことはない。いうまでもなく、給料は社長が決める。社長の給料は高く、派遣社員の給料は低く設定しているのは社長なのだ。格差は、あくまでも人為的に作られたものである。

人為的に作られたものを規制するのは実に簡単なことだ。役員給与は社員全員の同意で決めなければならないという法律を作ればよいだけである。嘗ては、日本にも労働組合が機能しており、従業員の給料を低く抑えたまま社長の給料を高くするなどということは出来なかったのだが、職能やランクが多様化した現代では、一丸となった労働者の団結などと言うことは難しく、労働組合が機能しなくなってしまっている。

労働組合がない企業の場合も法律で過半数代表者という制度が定められており、例えば、経営難で賃金を引き下げる場合などは、過半数代表者の同意が必要である。これを少し拡大して役員給与の決定、正しくは株主総会に提案する役員報酬案の決定には過半数代表者の同意が必要とするだけでよいだろう。従業員の給料から見れば常識はずれな役員給与を排除するだけでも、格差の是正には大いに貢献する。

結果的には、利益をあげた企業では、適正に従業員にも利益が配分されるようになり、社会の経済循環は促進される。経済効果も大きいだろう。格差の是正といえばすぐに税金を考えるのは正しくない。不適切な格差を大元で是正する必要があるのだ。

おかしな消費税報道 [経済]

安倍首相が消費税の増税を発表した。テレビ各局は一斉に記者会見の模様を中継し、翌日の新聞紙面は「よく決断した」、「5兆円の経済対策とセット」といった見出しで増税批判はどこにもみられない。

経済対策の中身は、企業減税であり、それどころか、勤労者には25年も続く震災支援特別税も企業負担分はなくしてしまうという極端なものだ。これでは増税は企業減税のために行われるということになる。政府は財政危機を訴え、消費増税を財政再建で正当化してきた。しかし、今回の発表に財政再建の見通しは全く触れられていない。説明はウソだったのか。

世論調査でも国民の過半数が増税に反対していることを、もちろん新聞社は知っている。企業減税が内部留保を増やすばかりで、庶民の生活に何の役にも立たないことは、新聞自身が報道している。

にも関わらず、この消費税を容認する一斉報道の姿勢はなんだろう?安倍首相はマスコミ対策に細心の注意を払っている。記者に語るのではなく、もっぱら裏工作だ。就任早々から、マスコミの社長と頻繁に会食し、ゴルフをし、マスコミ経営者に働きかけるという、ことを繰り返している。

マスコミは社会の公器である。こういった裏工作で動かされて良いわけがない。経営からの圧力に動じないジャーナリストの奮起を望みたい。一般の人たちもこしうした報道のあり方についてもっと注意を向けるべきだ。おかしな報道姿勢には、はっきり反発しなければいけない。公器を育てるのは民衆だ。

特区なら何でもやり放題----解雇特区 [経済]

大阪の橋下市長が解雇特区を申請すると言い出したとき、まさかと思った。勝手な解雇は労働法違反の犯罪であり、いくらなんでも犯罪特区はみとめられないだろうと思った。ところが政府がこれを検討し、認可の方向だというから驚く。ブラック企業特区だとして、圧倒的に批判が多い。

何にでも、政府擁護の論調を張る人はいる。賛成論をネットで検索して見るとやはりあった。

その一つはこの特区ではブラック企業が育たないというものがある。ブラック企業は、社員が辞職せず劣悪な環境で労働し続けることを望むので、解雇特区は魅力的な存在にはならないというのだ。もちろん、そんなことはない。どのブラック企業も社員の回転は早い。次々に雇っては使い捨てにするのがブラック企業の手口だということは知れ渡っている。泣き寝入りせずに職場環境を改善しようと立ち上がる社員を首にできるのは大きな魅力だ。

一つはこの特区は外国人雇用が30%という限定がついており、外国企業を誘致しやすくするのがその本質だとするものだ。外国には解雇制限がなく、いかにも日本の環境が特殊であるかのような言い方だが、これはおかしい。外国でも解雇の制限があり、フランスなどは日本よりもはるかに厳しい。アメリカでは解雇の自由が原則であるが、そのかわり、雇用保険は100%会社が持つし、一年つとめただけでも、失業手当が最長2年(99週間)と言う手厚さだ。日本の雇用保険制度で解雇権を乱用することは人権侵害の範疇になる。外国人がみな高給取りではない。フィリピン人を使った介護企業、ペルー人を使った養豚、中国人を使った裁縫企業など、外国人を低賃金でこき使うブラック企業も多い。

解雇を大学院修了者に限定するという案も検討されているようだが、大学院修士はもはや高学歴ではない。就職試験に失敗して大学院に行くケースもある。大学院に行かなければ首にならずに済んだのにという変なことも起こる。研究職場ではポスドクと言う立場があり、5年契約だったりするが、特区になれば、常勤でもいつでも首にできることになる。アカハラ(アカデミック ハラストメント)が横行して、若手研究者の能力を削ぐことになるだろう。

残業代を支払わない自由な労働で能力の高い人を高給で雇うのだからという擁護論もある。しかし、裁量労働制はすでに多くの専門職種で認められているし、管理職なら残業代はいらない。ことさら、特区で認定しなければならない残業手当てなしの雇用とはどんなものなのか?能力の高い人を高給で雇うことにはならないのは明らかではないか。特に専門的な職種で無い人を「定額使い放題」にすることでしかない。

中には、やる気の無い人をさっさと解雇するほうが、やる気のある社員の励みになるという賛成論もある。これは結構複雑な話だが、結果的には「やる気のある」かどうかではなく「気に入られる」かどうかで決まることを考えなければならない。本当に排除したいのは、ろくに仕事もしないで「気に入られる」ことに専心しているやつだ。こういう連中は必ず生き残る。こういう人事問題は、雇用規則とは別の問題である。

特区はごく一部で、自分の住むところは関係がないと安心してもおられない。特区に支店を作って、首にしたい社員を支店勤務にすると云う手口も横行するかもしれないし、本社を特区に移転して、全国の社員に大鉈を振るうことも考えられる。そもそも犯罪を特区として許すなどというのがおかしい。放っておくとカジノ特区というのも出てきそうだし、賄賂特区や政治資金特区さらにはセクハラ特区まで出てきかねない。やりたい放題が続いている。

ブラック企業規制法案---審議に注目 [経済]

日本共産党が、参議院選挙の公約どおり、「ブラック企業規制法案」を提出した。サービス残業が発覚したら、労働者側が、「倍返しだ!」と言える残業手当2倍払いといったユニークな内容があって、話題にもなっている。

これまで共産党には提案権がなかったので「質問」という形でしか政策を出せなかったのだが、11人になったからぎりぎりで議案提出権を得た。早速、この権利を使って議案提出とはなかなかのものだ。

国会質問で、ブラック企業の実態を突きつけても「働く環境が良くなるように、会社も努力するよう期待します」なんて答えで、白黒をはっきりさせずにはぐらかされていたのだが、法案提出となると、各党は、賛成か反対かを決めなければならない。さあ、これがどうなるかが見ものだ。反対して否決するならその反対理由を述べなければならない。

おそらく、自民党側は官僚を総動員してアラを捜し、なんとか中身を審議しない方策を考えようとしているだろう。法案の出来しだいで、そういうこともありえる。あるいは審議の日程を引き伸ばす作戦に出るかもしれない。

法案提出は議員の数だけではできない。法律というのは他の法律との整合性だとか色々と難しい問題が多い。ブラック企業は労働法の抜け穴を使っているのだから、労働法を抜本的に改正するのが一番なのだが、細則とか施行規則とかまた閣議で決められてしまう省令などといった絡みがあり、何のことかわからない語句の羅列になって審議の内容がはぐらかされ、簡単に否決されてしまうという問題がある。

ブラック企業規制と労働法との関係は複雑で、下手をすると、まずこの法案は労働法の改正案が成立してから提出すべきものであるとして、審議せずにお蔵入りにすると言う手を使ってくる。今回提出された法案では、悪質なブラック企業の「名前を公表する」としているが、これも工夫の結果ではないだろうか。素人目には、生ぬるいように感じるが、ブラック企業の社長を懲役10年とかにすれば、今度は刑法の改正が必要になったりする。他の犯罪との量刑のバランスとか言い出してぐちゃぐちゃにしてしまうおそれもある。

こういった点を考え、審議せざるを得ない内容にまとめて、しかも実効あるようにするのが難しいところだ。

民主党なども提案権を持っているのだが、提出はあまりない。法案という形にするのはそれだけ大変なことなのだ。政府・自民党は、官僚という強い味方がいるので、この点では強い。着々と法案を提出して、野党はただ質問して抵抗するだけのことが多かった。法案提出は政策実行力の表れと言える。

この法案がどうなるかは見ものだ。社民党や民主党の心ある議員は、支援の体制をとってもらいたいものだ。


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労働力の流動化に解雇の自由は役立つか? [経済]

安倍内閣は日本を世界一企業活動がしやすい国にしようとしているということだ。その中で、労働力の流動性を高めるというようなことが言われている。会社の景気が良くて、どんどん増産したいのだが人手が足りない。増員したいのだが、景気が悪くなった時のことを考えると増員できない。日本では、生産調整のための解雇が難しいからだという。みすみす、ビジネスチャンスを失うことになるし、雇用も減る。またこのため、残業が多くなり、過労死が増えたりするのだと言ったりもする。解雇をもっと自由にすれば、企業活動は活発になるという理屈だ。

こういった生産調整のためとして、近年日本では解雇が難しい正社員の採用を控えて、非正規雇用を多用しているのだと言う。若年労働者の実に30%が非正規労働なになっているのだという。では、これで労働力の流動化が進んだかかというと。そうではない。相変わらず、日本は労働力の流動性が低いといわれている。非正規雇用は、実は労働力の流動化とは何の関係もない。非正規雇用を何年にもわたって続けている場合が多いのだが、このこと自体が流動していない証拠だ。どの会社でも非正規雇用にするのは、コスト低減、つまり低賃金にするためである。

同一労働同一賃金の原則からは、非正規であろうが、下請けであろうが、コストは削減されないはずだ。ところが日本では、「子会社は給料が安くてあたりまえ」とか「大会社は給料が高くて当たり前」といった、封建遺制とも言うべき常識がまかり通っている。本来、労働力の流動化に使われるべき雇用形態が、低賃金化のために使われている。この状況で解雇の自由を導入しても、やはり、低賃金化のためだけに使われるだろう。

自由に首を切られては、労働者はたまったものではない。会社は何のためにあるのか?それは金儲けのためではあるが、では、なぜ金儲けが許されているかといえば、生産により社会を豊かにするからだ。労働者を路頭に迷わすことは社会を豊かにすることではない。社員を食わせるのも会社の社会に対する責任なのである。

そういった本質論はさておくことにして、世の中を進歩させようと思えば、労働力が必要となる場所は日々変化するのであるから、やはり労働力の流動性というものは、必要ではある。短期間集中的に技術者を投入することが必要な大きな開発プロジェクトもある。しかし、技術の蓄積とか継承を考えれば、やはり安定した雇用も欲しい。両者のバランスの問題が議論されていると理解しよう。安倍内閣によれば、このバランスが、日本は雇用確保に傾きすぎているというのである。果たしてそうだろうか?


ヨーロッパでは日本以上に解雇規制は強いから、解雇の自由論者はアメリカと比較して議論しているのだろう。確かに、日本はアメリカに比べて労働力の流動性が低い。アメリカ映画には、「You are fired.」の一言で、すごすごダンボールの箱を持って会社を出て行くシーンが良く出てくる。アメリカでは、基本的に解雇の自由は経営者の権利のように受け取られている。しかし、この権利には代償が支払われていることが日本ではあまり知られていないように思われる。

1年間働いて失業したときの日本の失業手当はたった20日間だが、アメリカでは、州によって異なるが、最高511日(2013年現在)も支給される。それだけではない、失業保険は、日本では労使折半なのだが、アメリカでは全額、会社が支払う。日本の法人税が高いなどというが、こういった社会保険負担も含めれば、むしろ、アメリカに比べてさえ低いかもしれない。日本の労働力流動性が低いのは、失業保険が乏しく、失業に対する恐怖感が高すぎるからだ。

結果的に、スキルを持った労働者も、現在の会社にしがみつき、会社もそれをいいことに、能力に比べたら低い賃金で社員を使い続ける終身雇用が定着しているのだ。
労働力の流動化が本当に望まれるのは、高度な知識を持ったエンジニア層である。ホンダがIMAエンジン技術者を、十分に処遇しなかったら、辞めて、トヨタに移って、少し高い給料をもらうといったことが流動化である。能力のある人をつなぎとめようと思えば、会社は相応の待遇をしなければばならない。

アメリカではボーイングをやめてロッキードに移るというようなことはざらにある。技術者資源をより必要とされる所に速やかに移す。これが、望ましい労働力の流動性なのだが、解雇の自由とは関係のないことであるとは誰にもわかるだろう。失業の恐怖からの解放、転職の自由こそが流動化を促進するものだ。

現在言われている解雇の規制緩和は労働力の流動性とは何の関係もない。こんなものを許していたら、悲惨な社会が生まれ、世の中は疲弊していくばかりだ。




アベノミックスの終わり [経済]

不安を抱えながら登場したアベノミックスが、早くも末期を迎えている。2012年4月から10月までは、GDPがマイナスだったが、年末には若干黒字となった。これは民主党政権下で起こっていたのだが、変化としては注目されなかった。

ここで丁度政権を受け継いだ安倍内閣はアベノミックスを打ち出した。あまりにも旧態依然の経済政策であり、識者からは批判が相次いだが、時の流れに乗っていたから、1月からプラスを拡大し、ともかくもアベノミックスは功を奏したという評価が生まれた。株価も上がったし、富裕層は潤ったようだ。これが、目論みどおり、庶民にまで及ぶ好景気になるかどうかが注目されていたが、9月以降はあきらかな減少を見た。アベノミックスは早くもたそがれ始めている。

先進国に不可避的に生まれる空洞化現象に対してアメリカが取った対策は、ハイテクシフトだった。日本では、リストラによる経費節減だったことが最大の禍だ。2010年ころまで、コスト削減に支えられて、嵐のような輸出でしのいできた日本経済は、行き詰まりになった。若者の30%が非正規雇用で、研究開発は極端に切り詰められた。これ以上、リストラは難しいところまできてしまったのだ。 貿易収支は赤字が続いている。10月はとうとう貿易外収支を含めて経常収支も赤字となり、円安傾向が続くようになった。

不合理なほどの円高に揺れ戻しがきた。もちろん、円安は輸出には都合が良い。輸出の回復があって自動車メーカーなどは潤ったのだが、これは国民にとってはかならずしも良いことではない。円安で車のドル値段が下がってよく売れるということは、製造コストつまり給料がドルで言えば下がったことと同じだ。

円安が続けば、燃料や食料品などの値上がりが生まれる。暮らしが厳しくなり、国内市場はさらに冷え込んでいく。9月までのGDP増加は、消費増税を見越した駆け込みの住宅需要によるところが大きい。消費増税に間に合わなくなる9月で、住宅受注は、見事に減少し始めた。伸びてきたと思われたGDP統計も下がっている。来年にはまたマイナスになるような様子だ。研究開発が抑制されてきたことの帰結も生まれ始めて、エレクトロニクスなどは、まったく振るわない。このまま、4月の消費税増税につながれば、深刻な景気の悪化が懸念される。

一部には株価が上がっていることだけで浮かれている人たちもいるが、アベノミックスはマッチの火のように、ちょっと明るくついただけで、消えてしまいそうだ。そろそろ株価もピークをすぎて下降に向かう。来年4月以降、多くの国民の生活が危機に瀕することになる。我慢の限界を超えて、政府批判の声が高まるだろう。多分、そのことは安倍内閣にもわかっているはずだ。だから、今のうちに、しゃにむになって、秘密保護法などの、反政府運動を取り締まる手立てを整えようとしているのだ。

長期の見通しも厳しい。中国がGDP世界二位を確定したし、インドも追い上げてきている。第二東名やオリンピックといった景気刺激のような姑息な手段ではどうにもならないところまで来ているのだが、安倍内閣には全く他の手立てが思いつけない。

所得を政策的に拡大して、国内需要を高めること、耐え忍んでも研究開発と国内生産を促進して長期の視野を確保すること。これがなければ、このどんづかりからは抜け出せない。あらゆる無駄を省くのは当然だが、生活を不安定にする社会保障の削減は経済的にも大きなマイナスだ。今切り詰めるのは防衛費をおいて他に無い。そんな思い切りを安倍内閣に期待するのは無理だろう。なにしろ、美しい国日本などと、架空の世界に生きている人だ。

対オーストラリア関税協定(EPA)の得失 [経済]

TTPと平行して協議していたオーストラリアとのEPAが合意したという。日本が、牛肉や乳製品の関税を大幅に引き下げる替わりにオーストラリアは自動車関税を撤廃するというのだ。政府から広報資金を受け取っているマスコミは、こぞって、牛肉が安くなると宣伝しているが、失うものも大きい。

現在、日本の酪農は38%の関税に助けられて、オーストラリアの酪農品と対抗している。これで、日本の農家の酪農事業は壊滅する。これまで、ぎりぎりで輸入品に対抗するために、大規模化を進めてきた。莫大な借金をしてそのための投資をしてきた北海道などの酪農家は、何人かが自殺することになる。文字通り血を流すような譲歩をした協定になる。これに対して得られるものはどんなものだろうか?

オーストラリアも自動車関税をゼロにすると言うのだから、相互的なものだということになるのだが、実はオーストラリアにとって、被害はまったくない。自動車の関税があったのだが、これは高々5%に過ぎない。消費税よりも少ない。何より、オーストラリアには自動車産業がないのだから、国内的に競合するものがない。実はトヨタの工場があるのだが、2017年に閉鎖されることが決まっている。だから、いまさら関税を続ける意味すらないのだ。

自動車税の撤廃が、日本にとってどれくらいの利益になるだろうか? 国産車がないオーストラリアでは、日本車のシェアが拡大するなどということはない。5%の値下げで、大きく販売が伸びるわけでもないだろう。僅かでも自動車産業が潤えば、農家の何人かが死んでも気にしない政府だということだ。これは、恐ろしいことで、今回見放されたのは農家であり、自分は農家ではないから、安心だと思っていたら間違いだ。次は、あなたが犠牲になる番かもしれない。

そもそも、オーストラリアにはなぜ自動車産業がないのか? オーストラリアは早くも1947年に自動車生産を始め、かつてはかなりの国産車があった。それが、全部撤退し、トヨタなどの工場まで閉鎖される。人件費が高いからである。日本のように低賃金で働く人はいない。最低賃金は時給1700円であり、日本の4倍にもなる。日本のように時給700円で働くような人は誰もいないのだ。日本の自動車産業が盛んなのは、低賃金のせいだとわかってみると単純に喜べない。

自動車の生産が人件費の問題であれば、実は関税を撤廃しても日本からの輸出は増えないことが明らかだ。日本の自動車メーカーはすでにASEANに生産拠点を持っている。オーストラリアへはASEANから輸出したほうが便利だ。農業を殺してでも自動車会社の便宜を図ろうとしているが、すでに自動車生産は海外に移り始めている。今や、韓国、インド、ASEANが自動車の輸出国になったし、中国が参入する日は極めて近い。農業を見殺しにした自動車労働者は、次に自分が犠牲になる番が回ってくると知るべきだ。

貿易の自由化は、確かに世界の流れではあり、抵抗し続けることは難しい。だからこそ、時間が必要であり、どの様にして、犠牲を伴わなくするかが政府の役割なのであるが、そのような施策は全く考えられていない。農業に関しては、大規模化ばかりを推進してきて、結局のところ、傷口を大きくしただけである。

同じように、自動車を始めとする、工業も、海外生産の規制は何もなく、低賃金化によるコストダウンばかりを進めてきている。この10年くらいは、外食、宅配、などといった低賃金企業ばかりが伸張した。低賃金で産業を保護するなどと言う馬鹿げた政策のツケは非常に大きなことになるだろう。


出口のない政策提言---産業競争力会議 [経済]

「経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議」というのが、現在の日本の司令塔になっている。首相などの閣僚と学者・社長で政策を議論する。学者といっても、元閣僚とかパソナの会長を兼任する竹中平蔵などだから、結局、企業に取って何がおいしいかを議論する場でしかない。

安倍内閣のいわゆる「第3の矢」が出てくるとしたら、ここしかないだろう。中間報告のようなものが出ているが、はっきり言ってどん詰まりでしかない。もっと法人税を引き下げて、会社の利益を増やすとか、労働条件を切り下げて利潤を得やすくするなどといった陳腐な提言が主だ。こんなことで物が売れないという根本的な問題の解決にならないことは明らかだろう。

ベンチャービジネスに投資した場合の損失補てんを言っているが、物が売れなければベンチャービジネス自体が成り立ちにくいわけだから、投資を促進しても仕方がない。すでに低金利の資金は、行き先がなく、有り余っている。低金利政策の資金はみな金融投資に廻ってしまっているのが現実だ。

今後、日本の人口は半減していく。個々の所得を倍増しない限りGDPは半分になってしまうことになる。このためには、もっと利幅の大きな産業構造に転換して行かなければならない。そのためには、単に研究開発を奨励するだけでなく、研究開発なしで利益を挙げる会社を淘汰して行かなくてはならない。

外食、宅配、派遣など近年大きくなった産業は全部、低賃金だけを食い物にして太ってきた産業だ。これが研究型の産業を絶えず圧迫する。なぜこうなったかというと法人税を少なくしたからだ。研究開発に対する減税はあるが、もともとの法人税が少なければ、まったく魅力がない。研究開発費はどんどん少なくなっている。法人税はむしろ引き上げるべきなのだ。

そもそも法人税は、給料や原料費などを払って、なお利益が出る場合に課せられるものであって、採算にあえいでいる会社には関係がない。技術開発中心の会社は経営が苦しい。こういった企業を救うことが課題なのだが、まったく考慮されていない。法人税の減税などというのは、儲かっているろくでもない会社に、さらに儲けさせるものでしかない。

研究開発のやり方として、日本版NIHなど研究の司令塔を作る提言もあるが、これも馬鹿げている。研究は司令塔が指示すれば出来るものではない。地道に研究環境を作って、個々の研究者を自由に研究させて、やがて出てくるかも知れない成果を待つしかないのが当たり前だろう。研究者に対する締め付けを止める事こそ必要なのだ。研究が経済対策に直接結びつくとは考えないほうが良い。長い目で見れば絶対に必要なものではあるが、非常に息の長いものだ。

即効性があるのは技術開発力の強化だ。日本の製品は、大発明と言うよりも、むしろ、名もない多くの技術者たちによって品質の向上、工夫の積み重ねがなされて競争力を獲得した。ところが昨今のリストラで、こういた現場技術が、派遣労働化やパート化のために失われてしまいつつある。現場技術をどうやってリストラの嵐から救い出すか、どうやって分厚い技術者の層を確保するのか、これが最大の課題なのだが、産業競争力会議は全くそれに触れていない。

出口がなく、同じところをぐるぐる廻るだけの会議であるといえる。

TPPの謎---自動車関税 [経済]

TPP交渉が難航していると言う。その中でアメリカ側は自動車関税で譲らないなどとも聞こえる。全ての分野で関税をなくして行こうというのがアメリカの主張ではなかったのか。これはある意味で不思議だ。

アメリカの乗用車関税は2.5%でしかない。しかも90%は現地生産なのだから、実質上この2.5%が大きく輸出入に響くとは思われない。これで国内自動車メーカーが大きな打撃を受けるとも思われない。なぜこれに固執するのか、その理由を考えてみよう。

実は、この2.5%が現地生産日本車の価格を規定している。このお蔭で、アメリカで生産した車の価格が2.5%高くなるのだ。これが大きい。自動車生産コストの10%が労働コストだといわれているから、2.5%の上積みは給与水準の25%アップにつながる。事実アメリカの日系自動車メーカー労働者の賃金は日本に比べて25%方高い。2.5%の関税は、アメリカ人の生活水準を日本人より高めるために必要なものなのだ。だから全米自動車労組などが強く撤廃に反対している。

アメリカは自動車関税を維持すると言っているのではない。20年後にはなくすとは言っている。実はすでにNAFTAがあり、メキシコなどから輸入すれば関税はかからない。トヨタやホンダは、メキシコに大きな工場を建設して、アメリカで行っている現地生産をメキシコに移すつもりだ。このまま2.5%を続ければ、どっち道20年後にはアメリカ工場はなくなり、2.5%の関税で労働賃金を確保するという労働組合からの圧力はなくなるからだ。

アメリカにとって、むしろ重要なのは「非関税障壁」と称する対等な条件だろう。アメリカ車に有利になるよう国内制度の変更を求めている。関税は交渉のためのテコにすぎない。軽自動車減税の廃止とか、車検基準の緩和とか、安全や環境を度外視した特例の要求だ。こういった要求を全部受け入れたとしても、やはりアメ車は日本で売れないだろう。基本的には性能の割りに値段が高すぎるからだ。自動車の製造は、労賃の安い国に移行していく。

だから、TPPの主要な力点は、農業製品と保険ビジネスにある。日本の農業市場と医療・保険市場を支配するためには、何でもやる。自動車はたんなる取引材料にすぎない。アメリカ政府は、一応、将来のことも考えた戦略を持って交渉に臨んでいるのであるが、日本政府には、そういった戦略の片鱗も見えない。農民の生活にとって死活問題である農産物関税の値下げに、いとも簡単に同意しているようだ。医療・保険の分野は、頑張る様子すら見えない丸呑みらしい。交渉難航と言っても単なるパーフォーマンスで、結局認めるための儀式でしかないのが見え見えだ。

アベノミックスの崩壊 ----GDPマイナス6.8% [経済]

消費税増税以後の統計が発表され、政府があわてている。GDPが6.8%マイナスになったと言うのは東日本大震災を上回るインパクトだ。アベノミックスの成果などと言っていた株価も失速気味だ。6.8%と言っても4半期データを1年に換算すればの話だから、GDPの絶対値が大きく減少したということではない。しかし、これは大方の予想を上回るもので、この数値が今後減っていってやがて大きくプラスに転じるという希望は持てない。

当然のことだとも言える。アベノミックスなるものが言い出された時に、まともな経済学者でこれを支持する人はいなかった。アホノミックスなどと酷評されたものだ。理屈の上でこんなものが成功するはずがないということだった。

その悪評が、ここしばらく聞かれなかったのは、株価が明らかに上昇したからだ。まちがいなく富裕層は潤った。しかし、これをアベノミックスの成果だと言うのは正しくない。株価は、民主党政権の終わり頃から上昇しだしていた。要するに、資本主義の必然としての株価変動の周期性に遭遇しただけなのだ。丁度株価が上昇しだした頃に安倍政権がはじまっただけに過ぎない。

安倍政権のやったことは、貧困層から金を巻き上げて、富裕層に渡しただけだ。富裕層が潤ったことは間違いないが、全体として見れば落ち込みを増加させたことになる。株価以外の指標を追ってみればこれは明らかだ。円安で追い風になるはずの貿易収支も赤字が続いている。賃金の低下傾向は止まらない。

市場空前の利益をあげたトヨタでさえ、国内生産は増やしていない。販売が増えないと予測しているからだ。長期予測は深刻である。少しずつ人口全体の減少があるのだが、車を購入するアクティブ人口の減少はさらに大きい。自動車に限らず、どのような分野でも、徐々に売り上げが減少していくことを想定して成り立っている産業はないだろう。

アベノミックスがやったことは、これに追い討ちをかけることだ。消費税で購買力を目減りさせ、非正規雇用を増やして賃金全体を低下させる。購買力が増えるはずがない。まじめに生産努力をしている国内企業にとっては、展望が見出せない状況だろう。にもかかわらず、オリンピックだ、海外派兵だなどと浮かれている政府は真実どしがたい。危機をまともに危機と認識していない。

安倍政権が最大限に擁護する輸出大企業は、すでに日本を見放している。トヨタのように、生産拠点を海外に移し、日本が潰れても会社は生き残るという体制を整えているのだ。取り残された日本の国民は、やがて地獄を見ることになる。

アベノミックスの誤算-----消費が低迷から抜けられない理由 [経済]

アベノミックスの誤算は数々ある。空洞化が進んでいるために円安でも輸出が思ったように増えない。格差が広がりすぎていて株価が上がっても国民生活に波及しない。企業の利益が内部留保に廻されて賃金は増えないなど、指摘されている。アベノミックスは、基本的に国民から搾り取って大企業を潤すもので、経済の牽引車である大企業さえ潤せば、あとは何とかなるという発想に基づいているから、こういったものはある程度織り込んでいて、批判は蛙の面にしょんべんといったところのものではある。

しかし、消費税については、議論が噴出したこともあって、駆け込み需要とその反動には明確な予測を出していた。だからごまかしは効かない。過去の例に従って、3月には駆け込み需要があって、4月からその反動が「少し」あり、8月には回復するというシナリオが完全に破綻したことが明らかになった。統計局が発表した家計支出の減少が、過去の消費税アップに比べても格段に大きく、しかも一向に回復する様子がない。誤算を認めざるを得ないだろう。

過去の消費増税の時と何が違うのか?財務総合研究所が出した貯蓄分析を見て納得がいった。日本は、かつて貯蓄性向が高かった。1989年や1997年にに起こったことは、消費税の増税に対して、一時は消費を切り詰めたものの、膨張した生活を縮めるのは難しい。仕方なく貯蓄を減らして対応したということだ。

ところが、それ以来、賃金は下がり、公共料金は上がり、非正規雇用など環境も悪化した。貯蓄する余裕は、格段に少なくなっている。2008年の予測ではあるが、2014年は、平均的に国民の家計貯蓄がゼロになる年に当たる。実際の統計では近年少し増えているようだが、多分これは格差の広がりに起因するものだろう。

今回の消費増税は、もう貯金をする余裕がなくなっている状態で起こった。これが今までと違うところだ。貯蓄を減らす余裕がないから、当然、支出を減らすしかない。ない袖は振れないということだ。これで来年度さらに増税すれば、経済全体へのダメージも大きい。しかし、国際資本が潤って株高になればそれでよいのだろう。安倍内閣にとって日本の経済など、もうどうでもよいことなのだ。まさに暴走である。
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格差は悪か? [経済]

日本では、貧富の格差が増大している。金持ちは株高でどんどん太り、貧者は非正規雇用に追い込まれて、ますます苦しくなってきている。格差是正を望む声は大きい。

歴史的に見れば、格差は決して悪いことではなかったのである。原始、人々は皆平等だった。森の木の実を取ったり、貝を拾ったりの生活だから格差のつきようがない。しかし、生活は一様に不安定なその日暮らしだった。

やがて、農耕が始まり、収穫が計画されるようになると、生活は格段に安定した。多く収穫した者は、体力も付き、さらに収穫が増える。穀物は貯蔵できるので、格差は積み重なっていった。格差が大きくなると、他人に働かせるということも出来るようになり、ますます格差は増大していった。格差は、増大して行くものなのだ。

食料供給は常に不十分で、天候不順で収穫の少ない年に死滅した部族もあっただろう。しかし格差の大きな場合は、底辺は餓死したにも関わらず、格差があることにより、富裕層が翌年の種籾を確保することができた。人類は、格差によって生き延びて来たのである。格差で世の中は進んだ。

余裕のある者は、ますます蓄え、余裕のない者は飢えて、種籾、や農具、土地をも手放す。格差は、どんどん広がり、ついには、全国の富が一点に集中してしまった。大和朝廷の誕生である。「公地公民」などという制度は、すべての土地は天皇のものであり、すべての民は大和朝廷のために働くということを示している。

一種の奴隷制といっても良い。全国各地の収穫は、都に送られ、多くの部民が食うや食わずで働くだけの毎日であったのに、朝廷貴族は歌を詠んだりする優雅な日々を送った。しかし、このことが、文字を使った文化を生み出した。格差により、日本文化は生まれたのである。

格差が常に世の中を進めるものではない。ある程度収穫が増えてくると、王朝貴族たちは、すでに十分に食っているので、それ以上の増産を望まない。奈良時代には、開墾禁止令が出されたりした。格差が、世の中の進歩の妨げになることもあるのだ。

人々は、依然として飢えていたので、増産が必要だった。中央政府の意向に従わず、各地で勝手に増産を促進する乱暴者が出てきた。これが武士である。武士たちは地方分権的に領地を確保し、互いに競争した。この結果、日本の隅々まで耕地を広げることになった。

各領域内で、やはり武士と農民の格差は重要だった。農民が、ただ働くだけであったお蔭で、武士には学問をする余裕ができ、富裕層として、手工業製品の買い手となっていった。農産物以外の産品が各地に生まれたのは格差のなせる業なのだ。

農産物以外の産品が増えると、商工業者が増えてくる。世界では、こうした商工業者と武士との対立が起こってくるのだが、日本では、外国からの圧力で、その前に武士による支配が終わってしまった。地方分権がくずれ、中央政府の力が増すのだが、日本では、「王政復古」と言われる、貴族社会への逆戻りという形が取られた。実際には、工業化という流れには逆らえず、天皇制と資本主義の癒着という奇妙な形態になった。

工業化にも、格差は必要だった。工場を作るのは資本がいる。小さな規模で生産を始めて、利益をためることで資本を生み出す。資本の投入でさらに大きな工場が出来る。急速な発展のためには、賃金を抑えて、資本の蓄積を促進する必要がある。明治時代の日本は、今よりももっと格差が大きかった。丁稚奉公、女中奉公など食事が支給されるだけで、ほとんど無給のようなものだった。

格差で超金持ちが生まれることで出資が可能になり多くの工業が立ち上がった。もちろんその裏には労働者の劣悪な賃金があった。日本の工業化は格差のたものなのである。

日本は格差の少ない国だといわれていた時代があった。敗戦により、ほとんどの産業がいったん壊滅し、資本の蓄積が解消したからであるが、再生にあたって、銀行や株式会社の制度が発達したことも大きい。

自己資本の蓄積なしに、迅速な経済発展をみた実例が60年代の日本の高度経済成長だ。今では、有望なベンチャー企業には、資産家の決断に拠らずとも、銀行や投資家から資金が集まる。かならずしも、小さな規模から始めて、利益を積み上げて行く必要はない。外食チェーンなどは、あっと言う間に全国展開だ。むしろ、低金利で資金が行き先を求めているような状態だ。

これは非常に大きな変化だと言える。格差は多くの人々を苦しめるが、社会進歩のために役立って来た。必要悪として人類は格差を甘受してきた。しかし、今を見れば、これまでの歴史を推し進めてきた格差が、もはや必要でない時代に入ったということがわかる。"人類の前史が終わる"と言う表現もある。格差は、その歴史における役割を終えることになるのだ。

にも関わらす、近年、格差が増大しているということは、どういうことだろう。格差は、有用であるかどうかに関わらず自然に増大するのだ。社会発展にとっては、もはや必要でなくなった格差は社会の発展を妨げながらも、自己増殖を続けるものなのだ。

マルクスは格差と言わずに、階級という言葉で説明している。支配階級は、自らその権力を手放すことはない。延命のためにますますその支配を強めようとするのだ。弾圧立法、選挙制度、秘密警察、マスコミ操作などなど、そして、どのような手立ても尽きた時点で、一気に支配が転覆する。これを革命と呼んでいる。

マルクスが予言したように、革命となるのが必然なのか、あるいは、何らかの方法で、広がり続ける格差を是正する道を取れるのか、いずれにしても、格差をどうするかが、絶対的な課題となることに間違いはない。

日本を道連れにして崩壊するアベノミックス [経済]

アベノミックスは異次元金融緩和ということでスタートした。すでに低い金利をさらに低くして企業の投資を呼び起こそうというものであった。どこまで低くするかは、2015年末までに物価上昇が2%という目標を設定した。低金利で設備投資が進み、生産が拡大し、賃金も上昇し、結果として物価もあがる。引き続くデフレスパイラルからの脱却を目指したものだ。

現在、その目標は半分の1%しか達成されていない。いや、その1%も輸入物価の上昇によるものでしかない。アメリカ経済が好調で、金利の引き上げを決めたことで、ドル高が始まった。異次元金融緩和は、もちろん円売りを後押しする。為替レートだけは、確実に動いた。円安で輸入品の価格は上がったが、国内経済は依然としてデフレが続いているのだ。むしろ輸入原料の高騰で、生産は圧迫されている。自動車の輸出は円安で加速されているが、要するに日本人の労働を安売りしているだけだ。国内では生産物が売れない。

アベノミックスは最初から躓いていた。金利を下げて、銀行に資金を提供しても、銀行の投資先はなかったからだ。製品が売れる見込みがないのに設備投資で生産拡大をする会社などあるものか。銀行は、仕方なく、その金で国債を買った。国債の金利も安く、マイナス金利という事態まで起こった。銀行がなぜそこまで金利が安い国債を買うかというと、日銀が上積み値段で買い取ってくれるからだ。日銀が銀行から国債を買えるようにしたのもアベノミックスだ。通貨を発行することができる日銀が国債を買えば、タコが自分の足を食うようなもので、貨幣価値が暴落する。

しかし、今のところ平穏には見える。日銀に国債を売った金は、日銀に預けたままになっているからだ。当座預金残高は、どんどん増えて150兆円にも達している。銀行は、この150兆円をいつでも日銀から引き出せるのだが、今のところ引き出しは行われていない。銀行が引き出しを要求した時、日銀は支払えるのか?もちろん払える。日本銀行券(札)を印刷して渡せばいいからだ。何事も起こったように見えず、その額が不気味に増加しているばかりだ。2015年末には200兆円を越えていることになるだろう。

銀行に資金不足が生じたとき、たとえば何か経済ショックが起こった時、そうでなくとも株価が下がった時には、当座預金の引き出しが始まる。それが金融インフレの始まりだ。自動的に通貨の乱発行と言うことになり、円の貨幣価値が下がり、とんでもない円安が進む。ハイパーインフレに陥り、止めようもなくなる。日本経済の崩壊だ。

株高はいつまでも続かない。時限爆弾はすでにカチカチと音を立てだした。アベノミックスが引き起こす大崩壊がいつ起こるかは、単なる時間の問題なのである。

新「三本の矢」の正体 [経済]

安倍内閣は戦争法案を強行突破したために国民から総スカンを喰らっている。なんとか眼くらましを考えなければならないと、内閣改造を行ったが、代わり映えしない。そこで選挙目当てに耳触りの良い政策を唱えだした。新三本の矢である。目指すところは「一億総活躍社会」だと言う。新らしい担当大臣を任命した。しかし、これも古い。女性活躍担当大臣はどうなった?地方創生担当大臣はどうなった? いずれも、何の成果もないまま、兼任ポストに成り下がってしまった。安倍政権の復古調からは、「進め一億火の玉だ」という戦時中のスローガンがむしろ思い起こされる。一億総活躍担当大臣というのは、ナチスの宣伝担当:ゲッペルスといったところだろう。

旧三本の矢はどうなったのだ。? アベノミックスの目玉は3本の矢だったはずだ。一本目は、「異次元の金融緩和」だった。ゼロ金利で金を振り出して円安をもたらした。二本目は「大胆な金融政策」であり、銀行などの国債を日銀が買い入れるという禁じ手を使えるようにした。財政赤字を増やした。期待されたのは3本目の「成長戦略」のはずだったが、これは手付かずだろう。結果として、大企業の溜め込みである内部留保は増えたが、経済の成長など見られていない。「円安が輸出増に」「企業業績拡大が設備投資増加に」「雇用増が消費増に」という好循環は望むべくもなかった。

なぜ、旧三本の矢は失敗したかの反省も無く新三本の矢を言い出したのだからごまかしでしかない。「強い経済」「子育て」「社会保障」の三つに、具体的施策は示されていない。現在500億円のGDPを2020年には600億円にするだとか景気の良い数字を並べているが、多分安倍はそれまでに引退していて責任は取らない。人口一億以上を保つなどということは何の計画でもない。このままの予想でも、人口が1億をきるのは40年後のことだ。実はこれには裏がある。

子育てとか福祉だとか、これまで散々圧迫してきたことを唐突に持ち出しているのも白々しい。特殊出生率1.8も無責任で何の根拠もない。福祉は、どの分野でも削減がはなはだしく、充実といえば全て、これまでの政策の誤りを認めることになる。

目新しいところで、「介護離職ゼロ」などと言い出した。多分、解雇自由化で介護に至る以前に離職させてしまうのだろう。一見耳障りが良くても、必ず裏があるというのが、安倍政治だ。これまでも、こういったごまかし言葉を使って来ている。「予防に重点化した医療制度」というのは、もちろん、病気になった人を切り捨てることだ。

働く意欲がある高齢者への「多様な」就業機会を増やすというのは、年金支給を遅らせて、いやでも低賃金労働をさせるつもりだろう。わざわざ「多様な」とつけているところがミソだ。普通に働かせてもらえるのではない。労動基準法も適用されないシルバー人材センターのような所を増やすだけだ。

しかし、こういった場当たり的とは言え、新しい政策を打ち出したのはどういうことだろう。閣僚の顔ぶれを見れば安倍のイエスマンばかりで、およそ新しいことを言い出す素養は見出せない。何かネタ本があるにちがいない。

きしくも経団連の榊原定征会長が「経団連ビジョンで掲げた目標とほぼ内容的には軌を一にしている」と褒め讃えた。「経団連ビジョン」は、今年1月1日に同会が発表した「『豊かで活力ある日本』の再生」と題した提言だ。GDP600兆円の実現や人口1億人の維持を打ち出しているからこれからのパクリだ。

新三本の矢の具体策はこの提言の中に書いてある。この目標実現のために経団連が提起するのは、現行約32%の法人実効税率を2021年度に25%に引き下げる一方、消費税率を19%に引き上げるという驚くようなことが書いてある。人口1億人維持のためには「外国人材の積極的受け入れ」を言う。人口1億人維持は、40年後まで問題にならないから口実に過ぎない。低賃金を維持するために外国人をいっぱい雇い入れると言うことだ。

恐ろしい世の中が待ち受けている。

これからの日本はどうなるか(2016年) [経済]

歴史の大きな流れを見てみよう。世界各国はそれぞれ独自の道を歩んでいた。大航海時代に世界がつながった結果、先進国が後進国を収奪して資源を手に入れる時代となり、国家間格差が広がった。しかし、交通・通信がさらに発達すると、今度は安い労働力を求めて生産が拡散するようになった。現在も世界には大きな国家間格差があるが、あきらかにそれは縮まる方向にある。

日本は、いち早く西洋文明を取り入れ、アジアにあって先進国の仲間入りをした。先進国をまねて周辺諸国を侵略することもした。軍事侵略は第二次世界大戦で破綻したが、一転、軍事費を使わず、一切を経済に集中することで復興を遂げた。一時は、アメリカに次ぐ世界第二位の経済大国にもなった。

しかし、均一化に向かう、世界の趨勢は変えようがない。発展途上国は、次々と離陸し始めた。韓国・台湾が飛躍的に生産力を高めたし、中国の発展は目覚しい。今や、アジアの経済は中国が中心になりつつあり、日本の経済力を大幅に上回るようになった。インターネットは情報面での拡散・均一化を飛躍的に加速することになった。

人口30億のアジアの一角にある高々1億の人口を占める国であることが否めなくなる。「小さいが、独自性をもった心豊かな国」を目指すのが当然なのだが、現在の政府の対応は、大国であろうとする悪あがきに終始している。中国を上回る経済力を持とうとしたり、アメリカと組んで軍事的に中国を封じ込めようとしたり、無理筋な道をたどっている。

これから起こることは、こういった無理が破綻していくことだ。なんとしても企業活動を盛り立てようと、企業減税して消費税を増やす。軍事費を増やして福祉を圧迫する。低賃金労働を増やして企業利益を確保しようとする。こういったことは、当然国民全体の疲弊を招く。これから起こることは疲弊の顕在化である。

現在、多少ある好況感は株高に支えられているが、これは長く続かないだろう。数年毎の周期は避けることができない。2013年から始まった株高も今年からは、下降期に入るだろう。アメリカは、金融を引き締めもどし、不況に対する打つ手を確保しようとしているが、日本は金融緩和の効果さえ現れておらず、それが出来ない。金利はゼロ状態だし、国債残高も上限を超えている。打つ手がなく不況に陥った時の反動は大きい。今の株高は、日銀による株価吊り上げによるなど、人為的に支えられた部分が大きいからだ。2016年はその転機になる年だ。

アベノミックスの金融緩和でマネタリーベースは、336兆円にもなったが、このうち貨幣として流通しているのは5兆円に過ぎないという異常な事態だ。日銀の当座預金残高が250兆円である。不況で銀行資金が不足すれば、当座預金の引き出しで自動的に通貨の乱発行と同じことになり、経済は崩壊する。労働運動が壊滅して、企業収益が賃金に反映されないという構造が、結局は命取りになる。

長期的にみれば、技術開発に頼るしかないが、この分野の疲弊が激しい。長年の無策の結果が響いてくる。出口が見えないまま模索することになる。政治の転換が必須だが、国民世論の受け皿がない。政治的にも模索が続くことになる。大きな揺れのなかで、極端な右翼の進出などが起こる一方、新しい動きも出てくる。何が起こるかわからないが、今年の動きとしては、きっかけが生まれるだけで終わるかもしれない。

世界的にはイスラム諸国での葛藤が続くが、事態が大きく拡大することはない。宗教やテロはもはや一時的な現象に過ぎず、世界の流れを変えることはない。テロが世界の脅威にはなりえない。しかし、「テロとの戦い」を口実にした大国の世界支配を高めようとする動きは増していく。安倍内閣は、専らこうした政治的な流れに乗って、「大国」にしがみつこうとするが、足元が崩れて行く事は避けられないだろう。

世界の歴史は進んでいく。

マイナス金利でいよいよ経済崩壊 [経済]

日銀がマイナス金利を導入した。いよいよもって、アベノミックスは崩壊に近づいている。

量的金融緩和でゼロ金利にして、資金を銀行に放出した。銀行から企業の設備投資に貸し出し易くするためだ。金利が安いなら、銀行から借金して工場を建て増しする会社が増えるだろうということだ。しかし、工場を建て増しするほど物は売れない。量的金融緩和は失敗に終わった。

次にやったことは、質的金融緩和だ。銀行に金を供給するだけでなく、銀行が持っている債権などを日銀が買い取るのだ。銀行が貸し出したときの借用書を返済を待たずに、日銀が買い取ってしまうことになる。これでまた銀行が企業に貸し出し易くなる。しかし、工場を建て増しするほど物は売れない。質的金融緩和は失敗に終わった。

企業に貸し出しの出来ない銀行は、国債や株を買って、それを日銀に売ることを始めた。これで株高にはなったが、なんのことはない日銀が札を印刷してそれで株を買ったのと同じことだ。日銀に国債や株を売った銀行の金は、日銀に貯金されたままだ。当座預金残高は250兆円にもなった。相変わらず、工場の増設は起こらないままだ。

今回のマイナス金利は、銀行が日銀に貯金しても利子がマイナスになるという処置だ。なんとかして銀行が日銀に貯金するのではなく企業に貸し出すようにして、設備投資につなげたいということだが、物が売れないのでは工場の増設など出来るはずがない。マイナス金利政策も、やっぱり失敗するだろう。

物が売れるようにするにはどうすればいいか。誰も買いたくないわけではない。新しい春物スカートは女性なら誰でもほしい。買う金がないから買わないだけだ。低賃金非正規雇用が増え、将来に不安を抱えている人が増えて、とても春物スカートどころではない。追い討ちを掛けるように消費税が増やされる。

格差が拡大して、溜め込まずすぐに消費して経済を回転させる層への資金が減って、多くの金が富裕層に流れ込んでいる。富裕層に渡った金は、溜め込まれるばかりだ。格差の是正、雇用の正常化なくして経済の行き詰まりは解消できない。企業への優遇処置、規制緩和ばかりを追求するアベノミックスでは救いようがない。

制度的に一番問題なのは、企業が利益をあげた場合、それを素早く賃金に反映させるメカニズムがないことだ。普通の国では労働運動がその役割を果たしているのだが、日本は御用組合がはびこり、ストライキがほとんど見られない異常な状態にある。空前の利益をあげる会社ですら、賃金上昇を牽引することなく内部留保を増やすばかりになっている。

低賃金非正規雇用の解消、格差の是正、労働運動の再建、逆説的だが、これが今の日本の資本主義経済に必要なことだ。

なぜアメリカ車は売れないのかーートランプさん知っていますか? [経済]

トランプ大統領が日本の自動車メーカーにかみついている。アメリカの自動車が日本で売れていないのは不平等な貿易環境のせいだという主張だ。しかし、アメリカの自動車は無税で日本に輸入できるし、日本車のほうがアメリカへの輸出にはハンディがある。それでも、結果的にはアメリカの車は日本で売れていない。

トランプ大統領にしてみれば、アメリカ国内である程度のシェアがあるフォードやGMの車が日本で売れない理由として、貿易障害しか考えられないと言う事だろう。実際、アメリカの車はそう悪いものではない。アメリカは自動車産業発祥の地であり、技術力も優れている。僕は、アメリカで暮らしていた頃、3台のアメリカ車を乗り継いだが、どれも、なかなかいいものだった。

輸入関税がなくなったという話も聞いていたので、日本に帰ってからも、当時乗っていて気に入ったフォードのトーラスと言う車に乗ろうかと思った。ところがである。驚いたことに、随分と値段が高いのだ。日本の車は、いろいろと割引があって定価よりも安く買えるが、トーラスなどは定価販売だし、その定価も日本の同程度の車よりかなり高い。

国内の場合、流通網が整備されているから、当然国産車は値段的にも有利になる。アメリカで買う日本車は、関税分だけ高くなるし、流通コストも割高だ。アメリカで作った車は、それでやっと日本車に対抗できる値段になる。アメリカ車は本質的に値段が高いのだ。日本国内販売で、日本車がアメリカの関税分だけ安くなり、さらに流通網の効果で値段が下がればアメリカ車が太刀打ちできないのも当然だろう。

自動車の部品は、下請け会社からの納入で世界中どこでも同じような値段だ。エアバッグはタカタが欠陥品を売ったことで、アメリカの自動車メーカーも日本の自動車メーカーも同じものを使っていることが知れ渡ってしまった。アメリカで組み立てた車は値段が高い。それがどこから来るかというと、労働コストである。アメリカでは、労働者の給料が高い。それに尽きる。ホンダのアメリカ工場で働く人は、日本のホンダ工場で働く人の25%かた高い給料をもらっている。

アメリカ車が日本で売れるようにするのは簡単だ。日本の自動車工場で働く人の賃金を上げればいい。日本の賃金が異常に低いことが、アメリカ車が日本で売れない原因なのだ。日本の労働組合が会社言うなりの御用組合なのに対して、全米自動車労組はストライキもするまともな労働組合であることが大きな違いだろう。

トランプ氏は為替にも言及しだした。日本は不当に円安を誘導して輸出を有利にしているというのだ。もちろん為替相場は多少の介入は出来ても金融政策だけで自由に動かせるものではない。円が安いとすればその根本原因は低賃金にある。日本の最低賃金は700円とかで、アメリカオレゴン州では15ドルだから2倍もの開きがある。

トランプ氏が、安倍などの「説得」にごまかされず、御用組合の存在や下請けいじめの横行、非正規雇用の低賃金が日本で許されているのが不平等だと言う主張をして、最低賃金を1500円にしろと圧力をかけるなら、日本の国民からは歓迎され、少しは人気もでようと言うものだ。

「金もうけ」を超えた制度設計 [経済]

資本主義の基本原理は「金もうけは善」にある。世の中の生産やサービスは、ほとんどが民間企業が儲けのためにやっており、それが社会の繁栄をもたらしていると解される。儲けを大きくするには良い製品を作らねばならない。他の会社との競争に打ち勝つためには、より良いサービスを絶え間なく開発しなければならない。儲けは社会に対する貢献の証であり、儲けた人は偉い人と言うことになる。暗黙の了解となっているようだが、もちろんこれに、はっきりとした根拠があるわけではない。

「世の中は金がすべてではない」と声高に叫ぶ人もいるし、これに同意する人がむしろ多いかもしれない。「金もうけは善」には、絶えず疑問が投げかけられている。しかし、こうした叫びは無力だ。確かに世の中は金を中心にして回っている。国の施策にしろ、研究や芸術作品さえも予算があってなり立つ。慰謝にせよ名誉棄損にしろ裁判ではすべて金額だ。全ての価値を金で測ることが粛々と行われている。

全ての価値を単一の尺度「かね」に換算してしまう事が社会の運営を単純化する。価値を金で表現してしまうと、いとも簡単に評価ができることになる。評価ができれば効率化も改革も簡単になる。世に言う「民営化」はもうけを最大にすることが、最大の効率だという原理に基づいて「新自由主義」が提唱されているわけだ。人の効率的配置も手続きの簡素化も確かに最大の儲けにつながる。

しかし、これも根拠のあることではない。儲けを最大にするには、低賃金が一番だし、手抜きさえも役に立つ。原発事故などは儲けを追及することが必ずしも社会への貢献になるとは限らないことの卑近な例になる。価値を「かね」で測ることは、あくまでも一つの便宜的手段に過ぎない。「かね」を中心にした社会運営にはおのずと限界がある。だからこそ「金がすべてではない」という声が消えずに繰り返されるのだ。

儲けの追及が駄目だとしたら何を社会の基本に据えればいいのか。儲けを基本にしない方策が試みられたことはある。「儲け」を通さず、直接的に国民の幸せを計画すると言う社会主義の経済運営は、結局のところ失敗に終わった。ソ連は崩壊したし、中国は方向転換した。これまで試みられた社会主義は、結局、官僚主義が蔓延っただけで、「競争」も「効率化」も失われてしまった。「かね」を媒介にした社会運営がまだしも有効だったのだ。人類はまだ「かね」に変わる指標を見出していない。一方で儲けを追及する運営は限界に来ている。これをどうするかが現代の課題だ。

ドラッガーが晩年に手を付けようとした課題が非営利組織の経営学だった。営利組織の経営は単純明快だ。儲かるようにすればいい。しかし、非営利組織は、そうは行かない。ドラッガーはいくつかのガイドラインを示しているが課題の整理に過ぎない。そもそもこれは、「かね」を中心とした社会の中で非営利組織をどう運営するかといった問題の立て方でしかない。「かね」では買えない価値を認める必要があるのだが、それを定量化することが難しい。

やはり当面重要なことは、儲けのルールを確立して行くことだろう。儲けは厳格なルールに従って追及されなければならない。低賃金には歯止めをかける。環境を破壊してはならない。こういったルールによって儲けが社会への貢献につながるようにする制度設計が重要だ。それが政治の役割である。
金もうけはそのまま善なのではない。ルールによりそれを善に向かわせる必要がある。

ルールの中で一番重要なのは「競争」の確保である。「儲け」を媒介にした社会運営の一番大きな利点は競争にある。「儲け」を目指して競争することで効率を上げられる。しかし、実際には、競争を妨げるものが多い。独占もそうだし、政治を使った利権もそうだ。一番安直な儲けは競争を回避することに尽きる。金権政治、腐敗と言われるものは、競争を回避する裏道を見つけようとするものだ。

重要なのは、ルール破りや競争の回避が常に画策されていると言う認識だ。企業は絶えず独占を狙うし、低賃金を画策する。利権ほど安易な儲け口はない。ルールが甘ければ、環境破壊もやる。国民はこれに対して常に闘わねばならない。実際、独占大企業というのは腐敗した政府以上に官僚的で悪質だ。利益追求が公認されているから始末が悪い。企業秘密ということで、その挙動すら隠蔽してしまう。

こうした「儲け」を「善」に向かわせる闘いを保証するものが民主主義だ。人々の意思が政治に反映されればこうした社会制度が維持されるのだが、現在の状況がどうかと言えば、非常に心もとない。人々の自覚は十分ではなく、小選挙区制など選挙制度にも欠陥があるが、情報操作がなされ、本来監視下に置かれるべき企業体が逆に権力を握る、政治を支配してしまっているのは「財界」だ。人々は政治の本当の役割をまだ認識していないのである。

失業率の秘密 [経済]

安倍内閣の経済政策は基本的に庶民から搾り取って大企業にくれてやるというものだ。諸費税を上げて法人税を減らした。ゼロ金利で会社に必要な金はいくらでも貸し出す。だから株高は当然のことで、会社は景気がいい。

会社が儲かれば給料が上がり庶民もおこぼれに預かるというトリクルダウンの理論が庶民への言い訳だ。しかし、非正規雇用が増え、過労で死ぬまで働かされ、国民の暮らしは明らかに良くなっていない。会社の内部留保が増えるばかりで給料は上がるそぶりもない。

それでも、安倍晋三は国会で胸を張って答えていた。「失業率は下がっている。」「高校生、大学生の就職率は高い。」アベノミックスの成果がでるまでもう少しの辛抱だと国民に我慢を強いる。

確かに統計は安倍内閣以来、これらの数値が向上している事を示している。これはある程度アベノミックスの効果なのだろうか? しかし、家計支出は相変わらず低下しているのだから、トリクルダウンが働いているとも思われない。

ここではたと気が付いたのが人口変動だ。失業率にはトリックがある。日本の若年人口は減少している。今年、60歳を迎えた人は160万人。多くが定年退職になった。人減らしをしない限り、企業は160万人を雇用しなければならない。ところが22歳人口は120万人でしかない。かなりの人減らしをしても大学生の就職率は上がらざるを得ない。

65歳を越えて就労人口でなくなった人は220万人、これに対して新たに就労人口に加わった18歳人口は110万人で半数だ。当然失業率も下がる。まともに雇用が保持されておれば、とんでもない人手不足に陥るはずなのだ。

失業率が少し下がる程度に収まっていると言うことは、かなりの雇用破壊が進んでいるということだ。やっぱり、アベノミックスは何のプラス成果も出していない。失業率の数値を持ち出すのは安倍内閣のごまかしに過ぎない。

もともと失業率にはごまかしがある。日本の失業率は諸外国に比べて低いことになっている。実はこれも失業者の定義の問題だ。失業者の定義は、現に就職活動をしている人で一週間のうち一日のアルバイトも出来無かった人となっている。

職が見つからず、アルバイトで急場をしのいだら失業者ではない。就職をあきらめた専業主婦は失業者ではない。職がないから就職をあきらめた高齢者は失業者ではない。病気で寝込んでいたら失業者ではない。しかも、世界でも稀な少ない失業保険で失業者をアルバイトに追い立てるのだ。これでは失業率は低くなるはずだ。

言葉のごまかしに乗らず、悪政を糾弾して行かなければならない。多くの人たちが姑息なトリックを見破られるかどうか、日本人の賢さが試されている。

トランプにコケにされてる安倍首相 [経済]

森友問題でお尻に火が付いており、それどころでは無いかも知れないが、外務省は大慌てだろう。トランプ政権はアルミと鉄に大関税を打ち出した。全ての国などと言っていたが、南米もヨーロッパも皆除外して、実質中国と日本だけを対象とするものになった。

その理由が「安全保障上の処置」と言うのだからアメリカにとって日本は中国と同じ扱いと言うことになる。安倍首相が事あるごとに強調する「同盟国」はどこに行ったのだ。

安倍首相ははトランプが選挙で勝ったら、大統領に就任する前から、ご機嫌取りにはせ参じた。米軍機が民家近くに墜落しても飛行の差し止めも要求しない。毎年米軍には莫大な金を貢いでいる。これで中国と同じ扱いだと言うのだからバカにされているにも程がある。

安倍首相は事あるごとに、日米韓の連携を謡ってきたが、結局、米韓が頭越しに合意して北朝鮮との対話を決めた。「対話の時でない」と何度も繰り返していた安倍首相の発言には、何の注意も払われなかった。

トランプは「安倍首相はいい人だ」と褒めている。そりゃそうだろう。どれだけバカにされてもヘラヘラ笑ってトランプに付き従う。トランプが世界の非難を浴びるような発言をしても、安倍首相だけは、いつも無条件で賛成だ。

ヨーロッパの政権などはもう少し骨がある。ドイツのメルケルなんかは公然とトランプ批判をする。それでいて今回のアルミ・鉄鋼関税からは除外だ。何を言ってもニタニタ受け入れるアホだから気にしないと言うのがトランプの安倍首相に対する見方だろう。

何とも情けない首相を持ったものだ。森友問題でこれだけ味噌をつけているのだから、往生際悪くいつまでも政権にしがみつかないで、さっさと辞任してほしい。


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これからの日本はどうなるか(2019) [経済]

グローバル化という世界の大きな流れは変わらない。より多くの人々が国家をまたぎ、より大きな物品・資本が国家を超えて動く。生産も技術も拡散し、アジアの中で日本だけが先進国などという幻想は吹き飛んでしまった。こうした世界の流れの中で国民の豊な暮らしどう守るかが国家の役割なのだが、全く果たせていない。

低金利で見せかけの好景気を維持してきたが、経済状況は厳しくなる。これまで公的資金の投入で支えてきた株高も終わらざるを得ない。ゼロ金利政策は、世界の金融引き締め動向に抗し得なくなる。金融政策の破綻だ。国家財政は極端な赤字に陥っている。問題は長期の低金利・低賃金で甘やかされ切った産業構造だ。

非正規雇用・低賃金を利用した外食、物流、建設が主軸となってしまい、高付加価値産業への転換は結局掛け声だけである。ITは鳴かず飛ばずだし、IPS関連はいまだに政府資金依存だ。家電、半導体からの転換先を、原発輸出、航空機に絞った産業政策が失敗だったことが、いよいよ明らかになった。

東芝は米ウエスティングハウスの買収で大赤字を抱えることになったし、三菱のトルコ原発はキャンセルされた。英国での日立原発も撤退直前だ。安全性を満たせば建設費が跳ね上がり、もはや採算が取れる見込みが無くなったのである。

航空機もMRJの開発が遅れコスト面での破綻は明らかだ。追加資金の投入を続けているが、もうそろそろ限界にきている。これも採算が取れない。ホンダジェットは好調だが、技術も生産もアメリカで、実は日本企業ではない。無駄な補助金のつけはやがて国民に回って来る。

2019年はこういった世界の動向に対する下手な立ち回りが顕在化する年である。新入管法による外国人労働者の流入、外国ファンドによる企業の買収、EPAによる農業の衰退、これらが一気に噴き出してくる。社会不安は増大し、社会保障の削減、消費増税などで国民の生活はさらに圧迫されて行く。

これに対して、末期の安倍政権は、軍事を強化し、排外主義を煽ることで国民の目をそらすことに躍起になるだろう。戦前戦後を通じて日本は正しく、悪いことはみな周辺諸国のせいだという妄想に引きずり込もうとするのだ。マスコミを支配し、官僚を忖度で動かし、ボナパルティズムに進んで行くが、結局は主権は国民にある。どこかで国民は目覚め、踏みとどまる力を発揮するのではないかと期待する。
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最低賃金の引き上げが日本を救う [経済]

政府は株高に依拠して好景気と主張しているが、実質賃金はさがり、格差が広がり、貧困層が増えている。好景気を持続させGDPを上げることで問題が解決するような宣伝をしているが、企業の好業績が賃金の上昇につながらないことはバレてしまっている。

実のところもはや経済成長は重要なことではない。2016年の統計になるが、人口1.268 億人に対して国民所得は431.6兆円ある。一人頭340万円、4人家族なら1362万円にもなる。先進国の生産力は分配さえ適正であれば、誰もが豊かに暮らせる水準に達している。現在の分配が適正でなく、やたらな格差を生みだしていることがこそが諸悪の根源なのである。

生産性を上げるために、技術開発を進めたのは過去の話で、今の金融資本は手っ取り早く情け容赦のないリストラを行い、人々を過労死に引き立てる。僅かばかりの経済成長のために民衆が大きな犠牲を払うのは馬鹿げている。おこぼれで庶民の生活が楽になるはずがない。それどころか、ますます格差を助長して、庶民の暮らしは苦しくなるばかりかも知れない。人々を救う手立ては適正な分配を達成するしかないのだ。

どうすれば適正な配分ができるのか? これには手痛い失敗の経験がある。プロレタリアートが権力をにぎり、国家が生産手段を所有するという社会主義は、確かに底辺労働者の賃金を引き上げたが、国家による細部にわたる強制が必要になった。結局の所、極端な官僚主義を生み出し、市民的自由まで抑圧し、社会の活力を失ってしまった。まだ生産力が低く、資本主義に遅れて経済成長を追求せざるを得なかったことが、ゆがんだ方向に入り込んだ要因でもあった。

生産力が発展した現代にあっては、そういった民主主義の抑圧なく、自由を最大限に保持したまま分配を適正にすることが出来るのではないだろうか。ゴーンのような高給を禁止するのもいいが、新しい法律が必要だとかの問題がある。実施したところで抜け穴だらけになるのは目に見えている。ベーシックインカムを国が保障するという政策もあるようだが、それは格差を許容した上で、弊害を和らげるだけのものだ。膨大な予算が必要になる。

簡単な解決策はすでにある。予算も要らなければ法律改正の必要すらない。最低賃金法を活用して最低賃金を引き上げるだけでよい。最低賃金を1500円にすれば、底辺層の収入は増え格差は確実に小さくなる。1500円は決して無理な額ではない。多くの国ではすでに実施されている。もちろんこれには反対の声があがる。そんな事をすれば。つぶれる会社が続出すると言うだろう。

結構。1500円払えない会社はつぶれてもらおう。どうせ親会社にむしられ将来性はない。経営者はさっさと会社をたたんで、1500円で働く労働者の仲間入りをすれば良い。歓迎されるだろう。低賃金に依拠するしかない会社は消えてもらい1500円払える会社だけが生き残れるようにする経済構造の転換である。実際の所行き詰った日本経済の生き残りは、こういった高付加価値の産業を育成するしかない。荒療治が必要なのだ。

零細企業の倒産で多くの人が失業して路頭に迷うといった脅しがかかる。だが実際にはもっと楽観的だ。下請けの低賃金企業に部品を作らせていた親会社は、部品を調達するために、直接雇用して自社で生産するしかない。もちろん1500円払わねばならない。この程度なら大会社にとってみれば、内部留保もあるし、ほんのちょっと配当を減らせばいいだけだ。これまで、下請け制度を利用して、セコイ利益の水増しをやっていただけだ。

最低賃金を上げることで、確実に消費は増える。だから中小企業でも必要なものの生産なら値上げしても売れる。景気は良くなるから雇用も増える。生活保護などは減り、社会負担も軽減される。結局の所、脅しはカラ文句にすぎない。

1500円の話を進めて来たが、これで適正な分配になるわけではない。実はこれは始まりに過ぎない。これまでなぜ最低賃金を上げる運動が高揚しなかったと言えば、それはあまりに低額て実際に最低賃金で働く人が少なかったからだ。だが1500円になると違う。多くの人々にとって、最低賃金の増減が現実の課題となる。最低賃金が上がれば上がるほど最低賃金で働く人が増え、運動が大きくなって社会が公正な分配に向かって動き出すのだ。

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