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イレッサ裁判(3) ---治験と副作用 [イレッサ]

イレッサで多くの間質性肺炎が発生することは予知し得なかったというのは成り立たない。実際には5.4%の発生率だったわけだが、102人の治験で副作用が見出されない確率は計算してみると0.34%しかない。治験で必ず見つかると言っても良い。

事実イレッサ承認審査の報告書によれば、治験の段階で国内患者102人中に3人の間質性肺炎が発生している。それでも、アストラゼネカ社は、これを否定して、癌性リンパ管炎などガンの症状が進行しただけで、間質性肺炎ではないと主張した。論拠として、一件については死後解剖して間質性肺炎の所見が得られなかったことを挙げている。

しかし、2件については解剖であきらかな間質性肺炎の所見が得られているし、一件については、間質性肺炎が治癒してから2ヶ月経っての死亡であるから倍検で所見が得られないのも当然である。担当医も間質性肺炎の診断をしているし、審査官も間質性肺炎の副作用があることを否定できないと結論付けている。3件ともステロイドで治癒していることからも、間質性肺炎であることに疑いはない。一応、このことは審査報告書にも書いてある。

一般に、原因性の間質性肺炎はそう予後の悪いものではない。死亡するのは相当悪化するまで対応しなかった場合に限られるから、治験で死亡例が現れないのも当然だろう。副作用が多いとわかってからは死亡例が少なくなったのも同じ理由によるものだ。

国内で102件中3件であるし、国外では108件中4件の間質性肺炎が発生したのだから、これは大きい。リマチルの0.03%とは、違うレベルの副作用だ。副作用が少ないことが売り物の新薬として鳴り物入りで登場した手前、副作用を認めたくなかったのだろう。アストラゼネカ社は主張を変えず、結局、妥協点として「頻度不明」として添付文書に掲載したのが事の次第だ。

審査側の問題は、こういった会社の主張に妥協したことだろう。間質性肺炎の初期症状は息切れやカラ咳などだか、肺ガン患者はもともとこういった症状を持っている。治験でさえも、副作用でなく単なる病状の進行だとする主張がなされたくらいだ。このことで、逆に注意がなければ間質性肺炎の発見が難しいことがわかるはずだ。

治験だけで言えば発生頻度は3%なのだが、これが併用した薬剤を間質性肺炎の原因だとするなら、その発生確率を分析すべきであるが、これは行われていない。おそらく具体的な混入の可能性を特定できなかったのだろう。他の薬剤による副作用の混入が疑われる確率分析結果なら、治験の枠を広げて再度行ってから認可すべきだったのである。

治験は安全性の確認が目的の一つなのだから、いい加減な妥協は許されないはずだ。そのまま「頻度不明」で認可すれば、何が起こるかは殆ど自明ではないか。3%が間質性肺炎になり、その多くが間質性肺炎と診断されずに経過する。当然ながら、手遅れで副作用死も出てくる。実際の臨床では5.4%という発生率を示した。そして多くの人がなくなった。

多くの人が一日も早い認可を望んでいる夢の新薬だから、副作用不明のままでで認可したのだと言ういいわけはおかしい。治験の目的が失われている。治験では副作用を全部見出すことはできないから、予知できなかったと言うのも明らかにおかしい。ちゃんと治験にも間質性肺炎の副作用は出ていたのだ。通常の「頻度不明」とは異なるレベルの副作用があることを明示しない理由は、「副作用が少ない夢の新薬」と言う売り込みを妨げるという営業上の問題以外に何もなかった。

--イレッサ裁判を全部読む--

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