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一億層活躍と国民総動員 [政治]

戦時中、中学生だった物理学者の話を聞いた。「進め一億火の玉だ」という標語の通り、国民総動員で工場動員された。授業はまともに行われず、旋盤工として高射砲信管を作る作業をやった。過酷な労働の毎日であり、機銃掃射を受けたりの危ない目にもあっている。

高射砲は飛んでいる飛行機を打ち落とすものだが、飛行機はそれほど大きなものではなく、砲弾も小さいから、「ぶち当てる」などということは非常に難しい。高射砲弾は時限爆弾のように、あらかじめ爆発がセットされており、周囲20mほどにある飛行機が損壊するようになっていた。この時限信管の部品を精度よく削り出すことが与えられた任務だったのだ。

実際には、相手は動くものだから、いつ爆発させるかの発射前の設定がなかなか難しい。アメリカ軍は、この時すでに近接信管を開発していた。電波の反射で飛行機が近くにあることを察知して自動的に爆発する砲弾だ。この使用で、命中率は格段に上がり、日本の特攻隊も、多くは敵艦に近づく前に打ち落とされることになってしまった。このことを戦後に知って技術力の差を思い知ったということだった。

しかし、アメリカも最初から近接信管を持っていたのではない。戦争が進む中で。科学者も動員して、開発されたものだ。技術的にはそう難しいものではない。日本に、なぜ同じような開発が出来なかったのかという疑問がある。アメリカも戦時中には国民総動員だったわけだが、その中で数々の新技術を生み出している。国民の能力を引き出すことに成功したと言えよう。

日本では、確かに総動員はやったが、兵力として頭数を増やしただけだった。国民各自に能力を発揮させるという発想はなく、兵卒として徴用しただけだ。東大原子核研究所の所長になったS氏も軍隊では二等兵でしかなかった。阪大総長になったW氏も上等兵どまりの兵卒だった。職業軍人だけが威張り、国民は手足として使われただけというのが、総動員の中身だったわけだ。これでは、新技術などできるわけがない。

安倍内閣は、一億総活躍などという事を言い出したが、戦前回帰の姿勢から「進め一億火の玉だ」を思い起こさせる。中身的にも帝国軍隊と同じ誤りを犯しているように見える。すべての国民に活躍の場を与えると言いながら、若者の50%が非正規・アルバイトであることを憂慮していない。それどころか、規制緩和でますます、こういった不安定雇用を増やすつもりらしい。

50%の中には能力の高い人が当然多く含まれている。帝国軍隊が、一兵卒としてしか扱わず、人材を浪費したのと同じ構造が見える。本当に一億総活躍ならば、まず第一に、非正規雇用を規制して、企業に雇用責任を果たさせることだ。手足として狩り出すだけなら活躍ではない。主婦をパートに狩り出し、老人をシルバー人材センターで働かすのは、安い労働力を確保するための動員でしかない。あくまでも労働賃金を低く抑える企業優遇ばかりをやっておれば、ますます国の疲弊は進んで行く。
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