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TPPの罠を知っているか [政治]

TPPの事を知っているのは農業関係者でもそう多くはないだろう。日本はこれに参加していくそうだ。

TPPはTrans Pacific Partnership つまり太平洋の周りの国はお互いにお仲間だから輸出入に関税をかけたりしないでおきましょうという取り決めだ。アジアでなく環太平洋という変な「地域」であることにも注意されたい。

ヨーロッパではEUとして完全に関税を取り払って大きな経済圏を作った。内部で国策的な競争をして無駄なエネルギーを費やさない方が全体として大きな力を発揮できるという原理だ。

アメリカも対抗してアメリカ大陸を統合しようとしたが南米諸国の反発にあい、北米機構(NAFTA)に留まった。アジアでも同じような動きが起こり、(昔日本が欺瞞的につかったイメージの悪い言葉だが)大東亜協栄圏が出来ると米・欧・亜の3極体制になる。

そうはさせじとアメリカが先手を取って環太平洋などと言い出したのである。もともとはオーストラリア、ニュージーランド、ブルネイ、チリなど文字通り太平洋諸国の連合だった所にアメリカが割り込んで、日本に加盟を呼びかけている。だから実質は日米の自由貿易が大きな部分を占めることになる。

民主党が積極推進で、自民党も容認方針だから大きな議論にならない。農民票に支えられてきたはずの自民党は農民を公然と見捨てて、都市金融資本に改めて忠誠を誓った。大東亜共栄圏を阻害する売国的な条約だとして右翼の皆さんが大反対してもいいのだが、長年支配層に飼いならされてしまっている右翼はもはや中国・朝鮮の脅威しか考えることしか出来ない親米派なのだ。アジアの盟主日本を鼓吹した元気はとっくに無くなってしまっている。

議論が巻き起こらない理由に被害は農業だけだという錯覚がある。もう既に日本は多くの関税を撤廃しているので工業製品に影響は少ないといわれているからだ。確かに、一太郎のような国産ソフトを保護するためにWordに関税をかけたりしなかった。今後の航空機開発を育成するために飛行機に関税をかけることも考えていないようだ。自由貿易ということは関税による産業育成を無策にするとうことだ。いずれ中国やインドが自動車を大量生産するようになることを見越して本当に無策のままでいいのかの疑問は残る。

大きく影響を受けるのは農業だろう。米は一部の銘柄米以外はカリフォルニア米のほうが安くてうまい。牛肉、バター、チーズは国内生産の理由が無くなる。麦、とうもろこし、ジャガイモは太刀打ちのしようもないくらい値段に差がある。なにしろ肥沃な広大な土地が向こうにはあるのだから。農業の打撃は壊滅的だろう。

農業関係者には気の毒だが、都市のサラリーマンにとっては、会社はあまり影響なくて輸出が増えるから安泰で、食物の値段が下がるのは有難いということになりそうだが、そうは行かない。これが罠なのだ。

壊滅的打撃を受けた農業従事者や農業関連の産業はどうなるかというと、いっせいに他の分野に職を求めることになる。農業で食い扶持は補えるから僅かでも現金収入があればいいと言う人たちが労働市場にあふれる。現金収入だけで生きている都市労働者はとんでもない競争にさらされるのだ。

安い労働力への切り替えなしにどの会社も生き残れない。どの会社でも賃下げの嵐が吹くだろう。コスト低減依存の会社が増え、リストラがさらに進む。実際、この10年、日本の技術開発の遅れははなはだしい。まともに技術をそだてようとする会社はコスト削減会社に利益を持っていかれてしまっている。しかし、コスト削減はいつまでも続かない。やがて中国や韓国が日本より安く生産できる技術を身につける。

なんとか新機軸の創出にむけて軸足を移せたとしよう。そのとき再びTPPが効力を発する。大きな国内市場を持っているアメリカは企業化に有利だ。ワープロでさえ最初に英語版を売って採算を遂げ、それから日本語版を作るほうが開発費単価も安く有利なことは証明されている。新しいハイテク産業を育成しようとしてもすぐにアメリカ製品が市場を奪ってしまい芽が摘まれることを何度も経験することになるだろう。そのころになってやっとTPPと言う言葉が多くの人の知るところになる。罠は知らないうちは用意されているものなのだ。
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