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なぜ日本だけが慰安所を作ったのか [政治]

橋下発言で慰安所正当化があり、「どこの国でもやっていた」というが、もちろんこれはウソで、アメリカや、フランス、ソ連にはなかった。ドイツではあったらしいが小規模なものだ。全軍にわたり大々的に慰安所を作ったのは大日本帝国だけである。

橋下氏は「きれい事ですまない」と言っているが、たしかにどこの国でも兵士の性的要求は頭の痛い問題で、司令官たちは頭を悩ましただろう。ちまたの裏社会にはどこの国でも売春は存在する。だからといって慰安所を設営するなどという安直な解決には、日本以外のどの国も踏み込まなかった。現代人ならだれでも躊躇することを大日本の軍隊は平然と全軍でやってのけたのである。

なぜ躊躇するかと言えば、現代人は女性の人権が侵害されることを罪悪と認識しているからだ。性を金で売り買いしたり、強制することが罪悪であると考えるからだ。誰にも人権があり、これを犯すことはできない。自分も殺されたり、傷つけられたり、侮辱されたりすることを拒否する。この原理は憲法で保障された人権にある。もし人権というものが否定されるなら、自分の拠って立つところもなくなる。人権が正義を代表するものなのである。

フランス革命以来、人権ということが言われてきて人類の普遍原理となっている。ところが、大日本帝国には普遍原理としての人権というものはなかった。陛下の御心に沿うことが正義であり、例えば、殺人が犯罪なのは、人を殺すなかれという陛下の命令にそむくからに過ぎなかった。殺人であっても、戦場などで命令のもとでやれば、なんら罪の意識は生じなかった。

国民は、皇族、華族、士族、平民とランク分けされ、誰もが一様な人間ではなかった。男女の差別もあり、女性は一人前ではないので選挙権も与えないというのが国是だったのだ。明治天皇や歴代天皇は、多くの妾を持ち、男の配偶者に対する貞節を命じなかった。このことから、売春も行われ、身売りなどという女性の売り買いまで認められていた。

もともと人権意識が低く、女性差別もあった上に、中国人や朝鮮人に対する蔑視が重なった。朝鮮人を人と思わない蔑視教育が行われ、多くの日本人がそれに染まっていた。朝鮮人に国家運営能力がないので大日本帝国が代わって統治するなどということが平気で言われていた。日中戦争がはじまると、チャンコロなどと呼んで、中国人を下等民として扱うことが奨励された。

日本だけが慰安所を作った理由はここにある。朝鮮人や中国人の女性を人間扱いしないことが平気で行われたからだ。相手が人間でない、あるいは下等な人間だと信じ込んでおれば、人権を侵害しても何等恥じるところはない。だから平気で慰安婦を集めたりした。アメリカやソ連では、たとえ兵士の規律保持に苦労があったとしても、慰安所を作るようなことは出来なかった。まがりなりにも人権を尊重することが国の基本としてあったからだ。

人権尊重に遅れをとったことは、日本が大いに反省しなければならない点である。日本が、人権を普遍原理として受け入れたのは日本国憲法の成立によるが、今では世界の国々と並んで人権が尊重される国としてありたいと誰もが願っているだろう。

反省のない所に進歩はない。慰安婦問題を真摯に謝罪することは恥でもなんでもない。日本が自浄能力を持っていることを示し、世界の進歩に貢献できることをアピールする誇り高い営みなのだ。

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