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麻生「ナチス発言」の波紋 [政治]

麻生前首相がまたまた「失言」を繰り返した。憲法改定はナチスに学べというもので、本人の言い分では、あわててやることはないと言う主旨だったとのことだ。その内容を見てみると、この人は漫画しか読まないなどと言われているとうり、改めて不勉強な人だと感じた。事実関係が、全くでたらめなのだ。

「ワイマール憲法が、知らぬ間にナチス憲法に変わっていた」などと言ったのだが、ナチス憲法なるものは存在しない。ナチスは憲法を変えておらず、徹底した解釈改憲をやったのだ。ワイマール憲法は非常に先進的な民主主義的憲法だったが、第一次世界大戦の戦勝国による「押し付け憲法」だとしてナチスはこれを排撃した。このあたりの状況は、自民党の今に似ている。

憲法を完全に骨抜きにするためにやったことは「全権委任法」の制定だ。ワイマール憲法には、国家の非常時には憲法の効力を停止できると読める条項があった。実は、自民党の「改憲案」にも、こういった条項がこっそりと入れてある。当時、単独過半数にも達していなかったナチスだったが、中道右派との連立で、ヒットラーが首相になった。その首相に全権を委任するという法律を通した。憲法を越える法律だから、三分の二の賛成がいる。

ナチスの台頭に反発して共産党など反対勢力も国会ではかなりいたのだが、どうやって、三分の二を達成したかと言うと、議員の三分の二ではなく、出席者の三分の二と解釈した。その上で「国会放火事件」をでっち上げて、共産党議員に逮捕状を出した。出席できる議員の中ではナチスと中道右派で三分の二はある。中道右派と言うのは、消費増税を通して、原発再稼動を容認した民主党のようなもので、ふらついているから親衛隊が、右から少し脅せばどうにでもなる。

「全権委任法」が出来てしまえば、なんでも好きなように出来る。ナチス以外の政党を全部非合法にしてしまった。これも自民党改憲案にあるのだが、非常時には人権も制限できる。「公共秩序を破壊する潜在的危険分子」は予防拘禁することが出来るようになり、ドイツの政治運動は死滅してしまった。全権委任法は時限立法で1937年には失効したのだが、そのときにはナチスに反対する勢力は皆無になっていた。

このような歴史から、ナチスの改憲手法の何を学ぶというのだろうか。法制局長に極端な解釈改憲派を選任した安倍首相は、麻生氏の提言を実践しているのかもしれない。というより、首脳部の議論では、国民が知らぬ間に「解釈改憲で憲法を完全に規骨抜きにしてしまう」というのが、規定の方針になっていることを、麻生氏が漏らしたのだろう。

この麻生発言に対して、世界中からの批判が起こり、早々に発言を撤回することになった。しかし、反省はしていないようだ。アジア諸国からの反発には強弁するが、欧米からの批判にはきわめて弱いといういつもの対応だ。ナチスの盟友であった大日本帝国を評価する立場からは、ここまで強い世界の反発を予測しえなかったことにつきる。

安倍首相も「戦後レジームからの脱却」などと言っているが、世界はそれを許さない。現在の世界は、第二次世界大戦の反省の上に立脚しているのだ。東北大震災は2万人が亡くなる大惨事なのだが、第二次世界大戦では300万人の日本人と1500万人のアジア人が死んだ。まるで桁がちがう。この禍は100年や200年で忘れてはならない。それが、世界の共通認識であり、この認識を共にしない日本政府は極めて異常な存在といわねばならない。


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