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大阪都はなぜ失敗したか----大阪5郡案の提案 [社会]

堺市民に総スカンを食って、大阪都構想は破綻した。その原因を考えて見よう。もともとは、大阪を東京並みのにぎやかな町にしたいという橋下の思いつきからでたことで、「都」にすれば良いという安直な発想だった。都と府のどこが違うのかを考えて見れば、都の中には大きな市がなく、区があるということに気が付く。だから、大阪も市を廃止して都の直轄にすればよいと考えたのだ。

ところが、東京と大阪は構造がちがう。東京はバカでかい23区があり、あとは小さな市ばかりなのだが、大阪には堺、大阪と政令都市が2つあるし、豊中、東大阪、高槻も中核市になっている。これらの大都市はある程度、府から権限を移譲され、独立した施策ができることになっている。これが、大阪都にとっては大変目障りになる。大阪市を解体してしまえば、堺市が大阪府最大の都市となり、しかも政令都市としての権限を持っている。

そこで、堺市長選挙で堺市の解体をせまった。大阪都構想は大阪市では一応、受けが良かったようだが、堺市民からは批判をあびた。堺は大阪のためにあるのではない。同じようなことが、歴史上でもある。日本はかつて「大東亜共栄圏」構想を打ち出したことがある。中国だ日本だと拘っている時ではない、いまや欧米に対抗して「大東亜共栄圏」を作るときだと中国の解体を迫った。日本国内では好評だったが、当然中国では全くの不評だった。

東京と大阪では地理的条件もちがう。東京23区は丸い形で半径10km圏に全体が大体おさまる。ところが、大阪・堺特別区になると、いびつな形になり大阪府庁から半径30kmまでも広がってしまう。小さな生活道路は市道なのだが、区道というのはないので、都道となり、30kmも離れた都庁の管轄になる。きめ細かな行政サービスなどは期待することもできない。

東京都が23区を直轄にしてもやっていける一つの条件が、こういった地理的環境にあるのだが、もう一つ重要なことは財政力だ。東京は一人当たりの税収が大阪の5倍もある。驚くなかれ、なんと5倍だ。これは、一極集中で、ほとんどすべての大会社の法人税が東京都に入るからだ。この財政力にものを言わせて整備している東京都の区役所機構のまねをしたら、大阪はそれだけで財政を使い果たしてしまう。行政サービスに廻す金などなくなる。 だから「都」になったら住民にどんな良いことがあるのかを具体的には全く示せない。

橋下演説では泉北ニュータウンのリニューアルを例に出して、これは堺市ではできない。都にしてワン大阪でやる必要があるなどと言っていたが、市が府営住宅に手を出せないのは当たり前だ。これは府がやるべきことであり、堺が大阪特別区になることとなんの関係もない。市役所ではできないことは、区役所ならさらにできないだろう。

このように、大阪都構想には最初から無理があり、失敗して当然のものではある。だとしたら、今のままが一番良いのだろうか?府県、市町村といった二段構えの地方自治が曲がり角にきているのは事実だ。その昔、多くの自治体が村であったころに今の制度はできた。高等学校や保健所、病院の配置など明らかに村の行政能力を超えたものを扱うために県がおかれた。大都市が発展した今日、府県が行ってきた行政の多くが、市でもできるようになっている。こうした二段構えの行政が邪魔になるのは当然とも言える。

二段構えの弊害を払拭するための方策としてならば、大阪都構想はむしろ逆だったのではないだろうか。地理的、財政的条件から言えば、大阪府の方を解体したほうが良い。大阪府を5つの政令市、中核市のもとに5郡に分割し、府のすべての権限を郡に移管する。大阪府は5都市連合として運営することになる。5郡はいずれも中心となる大都市を持っており、独自性を発揮した行政をすすめることができるし、住民に対しても大阪府よりも、こまやかな対応ができるようになるだろう。郡をまたがるプロジェクトも、府が下手に介在するよりも郡どうしの直接交渉によるほうが早いのではないだろうか。

橋下氏に大阪府を解体するという発想がなかったのは、彼が最初に大阪府知事になったからであり、もう一つは、住民サービスよりも、むしろ都市から資金を吸い上げて、大プロジェクトに使いたいという志向があるからである。5郡に分割した場合、大工事のための資金作りは協議によらなければならないから、府への吸い上げよりも慎重な検討が必要になるのは間違いない。しかし、それは土建屋ばかりにもうけさせる箱物行政からの脱却には、むしろ好ましいものと言える。


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