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オバマの挑戦ーー国民皆保険と予算執行停止 [政治]

アメリカの債務不履行問題が報道されて、基軸通貨の信用問題がクローズアップされているが、むしろこの騒ぎをアメリカの内政問題として見るほうが現実的だと思う。基軸通貨の信用問題はどうせ前から言われていたことで、一朝一夕で変わることではない。

なぜ、アメリカでは政府期間が閉鎖となるような騒ぎになるのかは、日本ではなかなか理解されない。三権分立が厳しく守られているアメリカでは予算の執行は議会の同意がなくては、大統領といえどもままならない。下院は共和党が握っているし、上院も民主党は過半数ぎりぎりである。この中でオバマ政権は、画期的な政策を打ち出してきているから、たいしたものだと言わざるを得ない。今回の騒動は、共和党が予算執行を認める条件として、国民皆保険の多少の骨抜き迫ったことで起こった。

アメリカという国は対外政策においては、傲慢な度し難い国家であるが、内政的には、やはり優れたものを持っている。そもそもオバマを大統領にするなどといったことは、日本ではあり得ないようなことだ。誤解を招くような表現になるが、黒人の地位は、日本で言えば在日朝鮮人のような存在だ。国政経験も上院議員を3年勉めただけである。その上院でも黒人議員はオバマ一人だけだった。

オバマが注目されだしたのは、2004年大統領選挙の時の民主党大会からだ。イリノイの州議会議員でしかないオバマが基調報告を行ったのだが、その演説が評価された。しっかりとした政治理念を情熱を持って語ることが出来れば、無名であっても引き立てられる。黒人であっても結局は大統領になれた。これはすばらしいことではないか。日本で、タレントや二世ばかりが議員になるのとわけがちがう。優れたリーダーを選び出すことができるかどうかは国の命運を決めることになる。現在の日本の選挙制度は目を覆うばかりの惨状だといえよう。

初めての黒人大統領と言うだけではない。やはりハンディーとなる黒人であることを超えた実力の持ち主であったことは明らかだ。就任早々、皆保険法案を通してしまった。軍縮も決定してしまった。おそらくオバマは歴史に残る名大統領となるだろう。

アメリカには国民健康保険がなく、健康保険は民間企業にまかされており、利益にならない貧困層は保険から見放されている。保険産業は巨大な利権の元になっている。軍事産業が強力である事も良く知られた事実だ。これを全部敵に廻す事をやりとげる政治手腕は、驚くしかない。保険制度は、民主党が安定多数を保持していた時代に、クリントンも公約していたが、早々と挫折した。

オバマ健康保険は、日本で言う自賠責保険のような二階建てで十分なものではない。しかし、今、どこの国でも、社会保障を削減して、景気をよくすることばかりを考えている。そういう時代に、大掛かりな社会保障の拡充をやるということがどんなに大変なものかは、理解できる。きっぱりとした政治理念とそれを推し進める強い意志がなければ出来るものではない。

今回の予算停止騒動でも、オバマは皆保険に関しては一切の妥協を拒否した。そのために、政府機関の閉鎖まで起こったが、くじけない意思の強さをしめした。クリントンには決してまねの出来ない強さだ。国民への説明にも迫力があった。下院での多数を背景にした共和党のごり押しに批判が集まった。この間、共和党の支持率は20%にまで落ちたという。

共和党が、強硬に出た背景には、Tea Partyの進出がある。日本で言えば維新に当たる。地方議会で勢力を伸ばし、第三極と称していたが、要するに極端な右翼である。左派に妥協する既成右派にいらだち、右派の主張を押し通す強さを強調して右派中の支持を集めたわけだ。 この現象は日本でも同じように起こっている。第三極と称して人気を集める手法も良く似ている。

しかし、結局、Tea Partyに踊らされて強硬姿勢を取った共和党は墓穴を掘った。政府に前代未聞の混乱を引き起こしたとオバマ政権を攻めることにならず、共和党の支持率激減という反応を示したアメリカ国民の理性を日本人が持ち合わせているかどうかには自信がない。

病んだアメリカからも、民主主義の成熟をまだまだ学ばなければならない日本の現実を突きつけられた気がする。
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