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都知事選のボナパルティズム [社会]

都知事選挙が終わった。結果は、舛添要一  211万2千票、宇都宮健児 98万2千票、細川護熙 95万6千票、田母神俊雄 61万8千票というものであった。またしても、東京は都民を顧みない知事を戴くことになったようだ。

選挙は、原発問題が大きく浮上する中で行われた。しかし、原発問題が争点となったわけではない。舛添はしきりに争点隠しをおこなったし、結果から見ればそれは功を奏した。それでは、都民は何を基準に舛添氏を選んだのだろうか。舛添氏は以前にも都知事に立候補して惨敗を期している。舛添氏の個人的魅力ではありえない。争点隠しをするくらいだから、政策を積極的に訴えたものでもない。

自民党・公明党・大企業労組が推す候補者だから指示に従い従順に舛添氏に投票したという人が多かったということだ。原発は怖いが、政府がなんとか舵取りしてくれるだろう。軍事の突出が続いているが、まあ戦争なんてことにはならないだろう。経済の雲行きもあやしいが、ここ何十年かやりくりしてきたのだから、まかせておけばなんとかなるだろう。そんな票が多かったのだと思う。

日々の暮らしの中で、歴史の激動というのは感じられない。昭和の初期にだれもあの15年戦争の悲劇を実感するものはいなかった。黒船がくるまで、将軍家はおろか侍自体がこの世から消えてしまうなどとは誰も思いつかなかった。しかし、歴史のうねりは怒涛となって確実に押し寄せるものなのである。

「なんとかなるだろう」というのは、保守的な姿勢であり、今回の選挙結果はそれが主流であることの表れではあるが、田母神氏の票が年齢が若いほど多かったことは、それに加わった右傾化の流れを示している。極端な右翼である田母神氏の得票は、日本の右傾化の反映と見るしかない。200万人の日本人と2000万人のアジア人が死んだ戦争に対する反省をおざなりにしてきたことのツケが回ってきている。

バブル期の夢が忘れられない気持ちが、排外主義へと向かい、不調の原因をアジア諸国に向ける。過去の侵略を正当化する極端な右翼思想が受け入れられる下地がうまれ、インターネットをを通じて、拡大拡散されている。こういった情報に敏感な世代には、しっかりした歴史認識がないまま、南京大虐殺はなかっただとか、従軍慰安婦はいなかっただとかの荒唐無稽なことが事実として受け入れられることが起こる。

社会は進歩しているのだが、進歩が時として、逆行現象として表れることがある。丙午生まれの女は夫を食い殺すとして嫌がられたのは迷信であり、当然消えていくものであるが、丙午年の出生率が最も落ち込んだのは1966年だ。産児制限が進歩したために、かえって迷信が普及したことになる。

もう少し大きな歴史の流れでも、こういった逆流は起る。1789年のフランス革命のあとで、ナポレオンの帝国に戻った。フランス国民は帝政を熱狂的に支持した。もちろん、フランスにはその後共和制が根付いたので大きな歴史の流れは、結局変わらなかったことになるが、あの時点で歴史が逆行したことは事実だ。ボナパルティズムと言われる歴史の逆行現象は、時として起こるものなのである。

日本も今、ボナパルティズムに覆われようとしているのだろうか。日本の夜明けはまだ遠い。

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