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東京都知事選を総括してみる [政治]

東京都知事選挙の感想は前に書いたが、舛添要一:211万2千票、宇都宮健児:98万2千票、細川護熙:95万6千票、田母神俊雄:61万8千票という結果だが、この得票分析をもう少ししてみよう。

舛添は、下馬評どおりに当選したわけだが、過去の知事選挙で15%しか取れなかった実績があるから個人票が期待できないのは当然だろう。枡添が金に汚いことは知れ渡っているし、結婚3回、婚外子二人など素行も良くないから女性票は逃げる。明らかに、自民・公明・連合の組織戦の結果だ。組織票で舛添でなくとも当選させることはできた。しかし、猪瀬が取った430万票65%から見れば大きな後退ではある。前知事のお墨付きが猪瀬には大きく寄与していたことがわかる。知事選では現職知事の張り巡らした利権ネットワークの力が大きい。

考えてみれば舛添が自民党の候補になるというのもおかしなものだ。舛添は自民党を除名になった人物である。民社党の政権交代にあわてふためき、泥舟から降りるつもりで新党結成に走った。こういった候補を立てた裏には、自民党がもはや都民の心が読めなくなっているということがある。青島以来、何回やっても自民党が立てた候補は当選できないことが20年も続いている。自党の候補を立てる自信を失ってしまっているのだ。争点隠しもやったので、これでは大手を振って原発推進というわけにも行かない結果となった。

マスコミ報道では、舛添・細川の対決という見方が強かった。反原発の世論は60%を超えており、知名度抜群の細川・小泉コンビの威力を大きな話題にしていた。ところが、ふたを開けて見たら、舛添の圧勝で、細川は宇都宮以下ということになった。

細川が振るわなかった理由はあきらかで、最初から「勝敗は問題ではない」などと、やる気がなかった。反原発のパーフォマンスがやりたかっただけで、当選して粉骨砕身都民のために働くなどという意気込みは、さらさらなかったと言える。負けても残念な様子は見えない。これでは、ブームを起こして爆発的な集票などは当然期待できない。

実際、いくつかの運動が、尻馬に乗って細川への鞍替えを策したが、討論会にも応じず、公開質問状にも返答せずじまいだ。これでは、反原発のかなりを占める護憲勢力や反貧困勢力も大義名分上、細川に流れるわけに行かない。細川の立候補は反原発を割るための策略だったなどといううがった見方もできるくらいだ。

反原発勢力からは、細川に統一しろなどと言われた宇都宮だったが、結果的には細川以上の得票があった。反原発を第一に考えるならば、むしろ宇都宮への統一を考えるべきだったのだが、そんな声がまったく聞こえなかった。細川・小泉の過大評価があったことを否めない。こういった運動を率いる人たちにも、マスコミに踊らされない冷静な情勢分析が欠けていたのではないかと思える。

実際、宇都宮票は前回の対猪瀬戦よりも、投票率が低かったにも関わらず、1万票上積みしている。得票率では14.6%から20.1%だから、細川に票が流れたはずなのに、かなりの増加だ。前回の選挙でも、同じような政策、同じようなスローガンで戦った。政党で言えば、前回「日本未来の党」、「生活者ネットワーク」が支持に入っていたのだが、今回は支持から落ちた。前回自主投票だった民主も、はっきりと細川に回った。これだけ見れば、かなり得票が減っても不思議はないのだが、得票が増加したのは何によるものだろうか。

実は、前回と今回では選挙陣営の大きな違いがある。宇都宮氏は、強烈な自己主張をアピールするタイプではなく、人の意見をよく聞いて担がれるタイプだ。この点が、急進派には物足りなさを与える要因だが、こういった候補は、だれに担がれているかで、選挙が違ってくる。

前回の選対本部長は上原公子で、市民ネットワーク系やPOSSE系が取り囲んでいた。これらは、革新的な勢力ではあるが、「共産党嫌い」が結構しみついている。別に嫌いであっても、まともに共闘すれば良いのだが、素人らしく、それを表に出してしまった。

ダブル選挙の最中だったから議員候補との連携も必要だったのだが、初鹿明博2回、山本太郎2回の応援をしながら、笠井亮など全く顧みられなかったし、共産党系の「明るい民主都政を作る会」は事実上選対からはずされてしまっていた。革新統一を実現したいという共産党が、耐え忍んで、かなり譲歩した選挙だったわけだ。選対本部の引き回しがおこなわれ、動員体制もぎくしゃくした。選挙の会計も不明朗な所が生じて公正ではなかったという。

今回は、生活者ネットが細川にまわり、宇都宮選対を手放した。POSSEも細川に接触しようとしたが、貧困について何も語らない細川に肩入れするわけにも行かなかったので残留した。それでも、前とは意気込みがちがう。結果的に引き回しがなくなり、そのため共産党系も選対に入ることができた。選対本部は活力が出たし、運動員の動員体制もスムーズになった。街頭演説の効率も高まり、聴衆も画期的に増えたという。前の選挙とは神輿の担ぎ手がちがうのだ。それが、今回の得票増に結びついたことになる。

共産党の志位委員長は、選挙では負けたが革新統一に踏み出せたことで、まるで勝ったかのように総括している。それはそうだろう。ここ30年あまり、孤軍奮闘を強いられ、20%を超える得票をしたことがない。今回の選挙では、共産党も含む統一戦線という戦術が有効であるということを如実に示せたことになる。次への期待が出来たわけだ。左翼人士も、ソ連が消滅した今、反スタなどと若者には何のことかもわからないことで粋がっているときではなく、あくまで政策の一致をもとに共同戦線を広げねばならないことを思い知るべきだろう。

一方で、田母神などという、一昔前ならキチガイとして相手にもさらなかった候補が60万票も取って、若者に浸透している。もちろんこれには石原が肩入れしたということも大きい。前知事利権が猪瀬400万票の原動力だったことは確かだ。枡添の圧勝が予測されていたので、自民党本流でない枡添に不満を持つ右派人士は気軽に田母上に廻ることができた。金もあったし、著名人も引き入れた。それにネトウヨや面白指向の若者が乗ったというところだろう。日本の経済がおかしくなり、一番の被害を受ける若者は、未熟さゆえにこういった排外主義に引きずられやすい。しかし、鬱憤晴らしはものごとの解決にならないことは、自然にわかって行く。地道な努力。実際、それしかないだろう。


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