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橋下市長の人を見る目 [政治]

大阪の橋下市長は、独断でものごとを進めるのが好きだ。ぐずぐず相談するばかりで一向に決断しないという通常の偉い人と際立った違いを見せて、これを評価する人も多い。自ら言い出した民間人採用で、区長18人をあっという間に決めてしまった。一年後、3人が不祥事で後送されることになった。橋下市長は、自分の責任を認めつつも、人事更送なんていっぱいあるなどと言い訳している。人を見る目がないということかもしれない。

18人中3人というのは、普通ありえないほどの高率だということはだれでもわかる。明らかに橋下氏の人事は失敗だった。おそらく、橋下イズムへの共鳴度などという、変な判断基準を持ち込んだせいだろう。区長として真面目に仕事ができる人物かどうか、区長として行政を行うのに十分な知識を持っているかどうかが普通の判断基準であったはずだ。3人は真面目に仕事をするという自覚に欠けていた。

逆切れ市長選挙をやるなど、橋下氏というのは、思ったより頭が悪い人物であることは確かだが、橋下氏だって、真面目に仕事に取り組めるかどうかを、どうでも良いことだとは考えていなかっただろうから、じっくりと話し合って決めれば、もう少しましな結果になっただろう。市長は多忙で、そこまでやれないのが実情だ。要するに、何でも独断で決めるというのには無理があるということだ。

民主主義は、手続きが面倒で、まどろっこしい所がある。衆愚政治に陥り、必ずしも正しい道を選ぶとは限らない。ナポレオンのような天才に権限を与えれば、手早くそして正しく進められるのではないかとも考えられる。しかし、人類は長い経験で、たとえ遠回りであっても、結局は民主的手続きを経ることで、大きな過ちを回避することが重要だと学んだのである。

ナポレオンはヨーロッパに大きな犠牲をもたらした。日本でも、権限を天皇に集中する体制は、結局200万人の日本人、2000万人のアジア人犠牲者を出した。いくら右翼の人でもあの戦争が成功だったとは言えないだろう。歴代天皇がバカだったわけでもないし、極端な悪人だったわけでもないと思う。権限が集中すれば、実際に物事を決める情報ルートが極めて限られ、またそれを利用しようとする力学も働く。複雑な社会では、そういった権限集中システム自体が機能しないのだ。だから、現在では王政を敷いている国はほとんどない。

ところが、日本政府はこうした人類の獲得した英知に学ぼうとしていない。やろうとしていることは、道州制だとか、教育委員会の骨抜きだとか、閣議で憲法解釈まで決めてしまうとか、権限の集中を目指すものばかりだ。やりやすさを求めた、安直な政治は、道を誤る。この点ではアメリカに少しは学ぶべきだ。アメリカでは教育は、各市町村の教育委員会に完全にゆだねられており、大統領といえども口出しできない。中央政府には文部省のような省庁すらない。地方自治の独立性や三権分立も厳しく守られている。この面倒な制度が未開の地アメリカを世界一の強国にし、いまなおその地位をゆるがしていない所以でもある。

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keitan

 頭が悪いというよりは頭は良いけれどその内容を使い捨てにする、詰りは残るものがないということでしょう。
 私は2008年~2012年までは最悪の評価をしていた後に1年余りだけ支持し、今は特に関心はなくなりました。相変わらず面白いとは思いますが。あるべきモデルとするのは危ないと思います。
by keitan (2014-04-28 20:22) 

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