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TPPがやってくる---保険制度はなぜつぶれるか [経済]

TPPの問題として農家が壊滅することが言われているが、もう一つ重要なのは保険制度の問題だ。日本郵便がアフラックに利権を売り渡そうとしているガン保険などのこともあるが、ここで言う保健とは、もっと重要な健康保険のことである。政府も「国民皆保険は守る」と言っているし、TPPに直接保険制度の改変が謳われているわけではない。一部賛成論者は、TPPの対象外である保険制度を心配するのは幽霊に怯えているようなものだと言っている。にも関わらず、保険制度が心配されているのは何故だろう? 

TPPが掲げるのは関税と非関税障壁の撤廃だ。企業が相互の国に自由に進出できることを保証しなくてはならない。すでに日米ではこの処置がかなり取られており、日本の自動車会社は勢い良くアメリカに進出しているし、マクドナルドやKFCなどアメリカ企業の日本進出も進んでいる。TPPはこれを完成させるダメ押しのようなものだ。残っているのは農業と保険業くらいのものだ。

農業は関税で保護されており、保険業は非関税障壁で保護されている。健康保険はアメリカでは非常に大きな分野で、大きな健康保険会社があり、政界にも強い影響力を持っている。世界にも進出しているが、日本には一歩も踏み込めていない。なぜなら、日本の健康保険は政府が運営する国民健康保険や会社の健康保険組合に限られており、民間の健康保険会社は事実上禁止されているからだ。

この非関税障壁はTPPでは撤廃せざるを得ない。民間会社が運営する健康保険も認めろということに必ずなる。多くの人は民間会社が運営する健康保険を許可することが国民皆保険の制度の破壊につながるとは考えない。むしろ、選択の自由があっていいのではないかと思うだろう。競争により、より良いサービスが提供されると期待する向きもあるだろう。

ところが実はこれが大問題で、健康保険というのは選択肢で競争を作ると成り立たなくなる代物なのだ。例えば、健康保険会社は、自己負担1割の新サービスを始める。しかも加入金は国民健康保険より安い。加入条件は過去3年間病院通いをしていない健康な人に限るとすれば、これは十分に成り立つ。すると健康な人はこぞってこの健康保険会社の保険に移る。結果として既存の健康保険は病気がちの人ばかりになり、収支が悪化して値上げせざるを得なくなる。健康な人は小額、病気の人は多額では保険の意味がない。保険料を払えない病気の人が多くなり、皆保険制度は破綻する。

保険制度を維持するために、金のかかる治療を切り捨て、どうしても必要なベーシックな治療だけを既存健康保険の対象とする混合診療が導入されるだろう。保険会社からは高度な医療までカバーする「商品」が売り出される。現在も、高度な先端医療は保険対象外だが、何年か経つと保険適用になったりする。しかし、高度な医療までカバーする「商品」が売り出されていると、保険適用化するのは明らかな政府による営業妨害になるから出来ない。

まともな医療は、健康保険組合や国民健康保険からは外れ、保険会社が提供する新しい「商品」を買わないことには安心して暮らせなくなる。それを買えない人はあきらめるしかない。実際、アメリカの健康保険の現状はそうなっている。アメリカ方式を日本にも波及させようというのがTPPの本質に他ならない。
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