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30年後の農業 [社会]

TPPで日本の農業は壊滅するといわれている。確かに、今でさえ、重労働のわりに実入りの少ない農業は、後継者難であり、農業地帯は過疎化している。農地で働いているのは高年者ばかりだ。これでTPPの追い討ちをかけられれば、現在の農家が消滅して行くことは間違いない。

さて、それでどうなるか? おそらく多くの農地は耕作放棄され、荒地になっていく。都市近郊の農地は住宅地に転換されるだろう。しかし、農地の多くは都市近郊ではない。工業団地化の計画はどこでも起こるが、もう、日本は工場が次々に出来るという状況ではない。工業団地は売れ残ることが目に見えている。

使い道のない農地の価格がどんどん下落して行く。あるところまで農地が安くなると、転換点がある。人間は食わなくてはならない。だから、農業産物には常に需要があり、農地が極端に安くなれば、会社による農業生産が成り立つようになる。農家は壊滅するが農業は「再生」する。

農業会社が立ち上げられ、大資本が参入して超大規模な農業経営が立ち上がる。バス3台分もあるような大型機械が地平線の向こうまで一気に耕すようになる。日本が狭いといっても、地平線は8kmくらいだから、十分にこういった情景は可能だ。農業の生産性を上げるためには、こういった省力化を行い、一人当たりの収量を上げることが必要だ。土地が極端に安ければこういった資材に資金を廻すことができる。農業会社の社員は多く、こうした超大型農機の開発、設計に携わる。

農機具の運転は派遣労働者だ。高度にコンピュータ化されているから、運転そのものは無人で、やることは誘導と監視だけだ。道路工事の現場で旗を振っている人のイメージだ。キャベツの収穫とか、やはり人間の手が必要な仕事もあるが、これは低賃金の日雇い派遣になる。収穫は一時期だし、天候にもよるから、常勤ではありえない。農業で食っていけなくなった人々が都市に流れ込み、失業者は多いから、労働力が不足することはない。

明日の天気が確定するのは、真夜中ころだから、新宿あたりの夜中は、職を求める人が集まる。手配師が、選別した労働者が、ぞろぞろとバスに乗り込む光景があちこちに見られる。農地まで夜行バスが運行されるのだ。明け方農地につき、一日、キャベツを収穫して、またバスに乗り込み、夜中に東京にもどり、その日の日当をもらう。明日の仕事はまた、天気次第だ。キャベツの収穫には多少選別の知識があったほうが良い。「農業ヘルパー二級」なんかの資格を取っておくことが、強く求められる。工場などは海外移転してしまっているから、ハローワークではこういった資格習得の講座を勧められる。

省力化で収穫をあげるためには、除草剤とか化学肥料は必須だ。農業会社は、政治献金を積み上げて、規制緩和で、こういった農薬の使用をほぼ完全に自由にしている。そのため、あちこちで健康被害が出ているが、もちろんこれはマスコミでは報道されない。こういった政府データは秘密保護法に抵触するかもしれない。特別秘密に指定されていそうなことは危なくて、報道できないのだ。なけなしの賃金も、消費税が30%になっているから、あまり購買力がない。

夕暮れの畑に立って空を見上げながら、農業日雇い人はつぶやく。「ここで昔、自分の畑を耕していたんだ。
あれは、夢だったのだろうか。」






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