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研究開発力弱体化法ができてしまった。 [サイエンス]

秘密保護法を通した翌日に、こんどは、「研究開発力強化法」なるものを、自民・公明が押し切って通した。この中身はどう考えても研究開発力弱体化法でしかない。

日本の研究開発力はどんどん弱体化している。各企業がコスト低減ばかりを優先して、研究開発をリストラしていった結果だ。それを棚に上げて、今度は大学などの研究開発を、改革して「強化」するという。その中身は、まったく逆の効果をもつものばかりだ。

「資金効率的配分」が第一に挙げられているが、これは政府が長年やってきたことであり、「官僚が研究資金を牛耳る」と同意語になっている。研究はやってみなければわからない。失敗の連続でもある。最初から、結果がわかっていて、失敗のない研究計画を作文できるようなものに、ろくな研究はない。官僚が口出しして、効率的配分をやればやるほど、つまらぬ研究がはびこる。研究開発力を弱体化させる最も効果的な手法だ。

次に言うことが「人材の確保」だ。企業の開発技術者をリストラして、なにが人材の確保なのか。ここ10年くらい、研究費や学生の就職と抱き合わせで、企業から大学への人材の流れが相次いだ。要するに、リストラのための受け皿に大学を使ったに過ぎない。これを称して「人材の流動化」とは笑わせる。人事交流とは、双方向の流れのはずだが、大学の教授を引き抜いて、研究を推進しようとする企業などどこにも無い。研究開発に取り組む気が無く、コスト削減だけを考える企業ばかりがはびこることが最大の問題なのだ。

人材確保の具体策は、有期雇用の上限を5年から10年延長するというものだ。使い捨ての研究員を増やすことで、研究開発力が増えると、本当に考えているのだろうか。じっくりと腰を落ち着けて研究に取り組める環境を作ることこそ研究開発力の強化であることは、どんなアホでもわかりそうなものだ。

「実用化へのバリアを取り除く」が、その次に言われているのだが、実際のところ、そんなバリアなど有りもしない。実用に耐える研究成果そのものが枯渇しているのだ。「外部資金獲得の推進」は、もう十分に行われている。競争的資金を獲得するために奔走し、実際の研究は、アルバイト研究員や学生に任せたままで、いかにもしっかりした成果が出たように取り繕う。ウソとは言わずとも、誇大広告的な論文が、書き散らされている。そうしなければ生きのこれないように駆り立てるのが、「競争環境の導入」である。数多くの論文が出ているのに、実用化される成果が少ない原因はここにある。

「研究費の弾力的運用」も行き過ぎれば、不祥事を産み出すだけだ。研究費とか軍事費とかは、歯止めをはずせば、いくらでも流用できる。実際、弾力的運用のために、まじめに事務に精力を使っていたら研究はできない。研究費で人を雇ったりすれば、その管理が大変であり、IPS細胞の偽造で問題になった森口氏の事件のようなことがいくらでも起こる。研究者が研究に専念できるように、人をつけ、金をつけるのが、政府がやるべきことなのだが、研究に専念できないようにすることばかりが増えている。結果的に事務能力ばかり達者で、研究しない研究者が増えてしまっている。

この法律で言われていることは、すべて、これまで先取りしてやられてきたことばかりだ。そして、その結果も研究開発力の弱体化として、はっきり現れている。いい加減に目を覚ませと言いたい。本当に研究開発力を強化するためには、この法律に書いてあることを全て逆にすれば良いだけだ。


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