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労働力の流動化 [社会]

ホワイトカラーエグゼンプションの導入とか、解雇の自由などと、アメリカに倣った「改革」で労働力の流動化を促す政策が進められようとしている。労働力の流動化とは、適材低所で、能力がありながら、窓際でくすぶっていなければならない人材に活躍の場を与えるという意味では必要なことだ。こうした人材の有効利用が、これからの経済の進展には必須だ。しかし、これがこのまま日本で適用されたら地獄を見ることになる。

アメリカ映画では「You are fired」の一言で、ダンボール箱を持って会社を出て行くシーンが良くあるし、ホワイトカラーエグゼンプションも、年収23660ドル以上なら適用されるというすざましいことになっている。よくこんなことで暮らしていけるなあと思えるのだが、アメリカ人は陽気である。

実は、雇用の構造がまったく違うということがある。雇用保険が充実しており、全額会社負担で、1年勉めれば2年位も雇用保険で暮らせる。この負担を含めれば、アメリカの法人税は低くない。雇用保険が充実しているから、気に入らなければさっさと会社を辞めて職探しをする。上司と対立して首になっても、能力さえあれば再就職は容易だ。引き抜きも多いので、会社も、悪い待遇では、優秀な社員をつなぎとめておくことができない。待遇の中に休暇も含まれている。ホワイトカラーは基本的に残業などしない。

アメリカの場合、残業手当がないのだから残業はしないということになるのだが、日本の場合、ホワイトカラーエグゼンプションは際限ない残業を意味してしまう。この違いは雇用構造の違いだ。日本の雇用保険は最悪で、10年勉めても半年しかもらえない。しかも、その原資の半額は自分で払っているのだ。会社を首になったというだけで、無能力者の烙印を押されることもある。

実際、日本で能力のある人材が会社を辞めることは少ない。終身雇用に殉じるのが一番の出世街道になっており、それが一番活躍できる道だ。本当は、労働力の流動化が一番必要なのは、こういった優秀な人たちである。創成期に零細企業だったアップルが、超大手ヒューレットパッカードから人材を引き抜いた話は有名だが、日本ではあり得ない。俺は能力があるから、失敗してもまた転職すればいいだけだと思える世の中が活力を生み出していることがわかる。

この原因は、日本独特の下請け構造にある。子会社には、親会社からの天下りが常態化しており、これに公務員、銀行からの天下りが重なる。新たな人材を受け入れる余裕はないから人事が硬直化するのだ。大会社が中小企業を支配してしまっているのが問題なのだ。中高年の優秀社員の転職などあり得ない。日本で労働力の流動化を策するならば、まず親会社からの天下りを廃し、雇用保険を抜本的に充実させなければならない。そうでなければ、ただ単に労働者をいじめて、社会を沈滞させるだけのことになる。残念ながら、日本はその方向に進んでいる。

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